北京警察当局は1月2日、中国の有名女優トン・リーヤーさん(38)が、中国中央放電視台(CCTV)を運営する中央広播電視総台局長で、中国共産党中央宣伝部の慎海雄副部長(54)と再婚したとの噂を広めたなどとして、3人を拘束したと発表した。
この噂は昨年秋ごろからインターネット上で広がり始めて拡散し、昨年末には「不倫の末の結婚」と大きな話題になっていた。しかし、最近では中国本土でこの噂が厳しく検閲されるようになり、中国のネット上ではほぼすべての記事が削除されている。このため、今回の逮捕は、習近平国家主席に重用されている党幹部である慎副部長のスキャンダルをもみ消すためだとの見方が強まっている。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、3人はトンさんと慎氏が既婚者であったことや離婚したタイミングなどから、「2人が再婚する前に不倫関係にあったのではないか」との憶測をネット上で流したことから、逮捕されたという。
トンさんは昨年からCCTVの高視聴率番組の司会に抜擢されている。この時点で2人が親密な関係にあった可能性が指摘されているわけだが、その後、離婚直後に慎氏と再婚したとの情報が流れるようになった。香港紙「明報」は、当局が不倫説のもみ消しを図ったとも報じている。
さらに、香港情報筋などによると、中国国内ではトンさんが新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州イリ地区グルジャ市出身の少数民族出身であることも、隠蔽の大きな理由になっているという。テロの火種となり、当局による弾圧の中心となっている新疆ウイグル自治区出身者と党幹部の不倫説が広まれば、同自治区内の民族自決運動を刺激しかねないからだ。
2月5日の北京五輪開催を前に、中国指導部が西安市や北京に隣接する天津市における新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖(ロックアウト)などで対応に追われているさなか、党幹部による新たな不倫問題が明らかになれば、ただでさえ国際的にも恥の上塗りとなり、習近平指導部の苦慮が続きそうだ。