政界でポスト岸田の最有力候補に急浮上しているのが林芳正・外相だ。本誌・週刊ポスト2022年1月1・7日号の「ポスト岸田に推せる政治家ランキング」では茂木敏充・自民党幹事長に僅差の2位、月刊文藝春秋(2月号)の「次の総理候補ランキング」ではトップと、政治評論家や記者のアンケートで高い評価を受けている。
政界では早くから「宏池会のプリンス」と見られていたが、政治キャリアに比べて総裁候補としては“遅咲き”だった。
同じ下関市を地盤とするライバルの安倍晋三・元首相という大きな壁が立ち塞がっていたからだ。その安倍氏の退陣をきっかけに、林氏は参議院の山口選挙区から衆議院の山口3区への鞍替えを決断、総選挙後、岸田政権の外相に就任したことで“遅れてきた総裁候補”にようやく本当の出番が回ってきた。
だが、林氏が「総理」の座をつかむためには、強敵・安倍氏との“最終決戦”に勝たなくてはならない。
戦いは新春から始まった。今年1月4日、下関市の新年恒例のフグ初競りで、林氏の東大の後輩でもある裕子夫人が来賓の挨拶に立ち、関係者を驚かせた。
「山口4区の下関は、今は芳正さんの選挙区ではない。それなのに表に出たがらないことで知られる裕子夫人がわざわざ初競りに出席したのは、次の選挙で安倍さんから下関を奪い返すつもりだからでしょう」(林系市議)
次の総選挙では「1票の格差」是正で山口県は定数1減の対象で、現在の4選挙区から3選挙区に再編される。林氏の3区と下関を含む安倍氏の4区が合併される可能性が高いと見られている。中選挙区時代さながらの林家と安倍家の選挙区の奪い合いになるのだ。
一方の安倍氏も「3区の山陽小野田市に事務所開設準備を進めている。林に対抗するための出城です」(安倍系市議)と応戦体制をとっている。地元ではまさに一触即発の状況なのだ。
それだけではない。中央政界では、北京冬季五輪をめぐって安倍氏が「早期決断を」と岸田首相や林氏に外交ボイコットを迫り、岸田政権は政府代表団の派遣を見送るが、「ボイコット」の言葉は使わないというファジーな対応でかわした。