国内

東大前刺傷事件 勉強の場に自らを置き続けた逮捕少年と「同級生の死」

現場

犯行現場の東大農正門前(写真/アフロ)

 大学入学共通テスト初日の1月15日、超エリート高校に通う17才の少年Aが、受験生を襲撃する事件が発生した。Aは医学部合格者数全国1位という名門私立高校の生徒。志望校が東大だったAは、試験会場の1つである東京大学の前で3人を包丁で刺したほか、東京メトロ南北線・東大前駅構内でボヤ騒ぎを起こしていた。

 警察の調べに対し、「目指している医者になるため東大に入りたかったが、成績が1年前から落ちてきて悩んでおり、自信をなくした」と語り、「医者になれないのなら人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた」と犯行動機を話しているというA。岐阜県に住むAの祖父は憔悴しきったか細い声で、こう語った。

「息子から『Aがやらかしてしまった』と連絡がありまして……。孫なんて目の中に入れても痛くない存在ですよ。Aは素直でいい子ですよ。あんなことをするなんてまったく結びつかない……」

 祖父はこの1年くらい、新型コロナの影響もあってAとは会っていなかったという。

「そりゃあ東大へ行ってくれれば有難いですけど、オジイの口から『あそこへ行ってほしい』なんて言ったことはありませんよ。いまは被害者のかたのご回復をお祈り申し上げるだけです」(Aの祖父)

 祖父の自慢の孫であれば、父親にとっても自慢の息子であっただろう。Aの父がある冊子に家族について触れた文章では、4人の子供たちについて語っている。子供のなかには不登校児がいることなども赤裸々に語り『なかなか濃い家族構成となっている』と自嘲気味に表現するものの、それぞれの子供の微細な変化を把握している様子が見て取れる。

 長男のAについては、「私立の中高一貫校へ高校から入学したばかりだったため、この(コロナ禍による)自学期間が中学校上がりの同学年の猛者たちに追いつく好機」となったと語っている。

 Aは中学時代の卒業文集で、「勉強」というタイトルの文章を寄せている。そこには《順位というものが自分に大きな影響を与えました》との一文もあり、学ぶことの楽しさよりも、他者との比較を重視する思考が垣間見られる。そんなAの父が、Aについて語ったこともやはり“勉強”についてだったのだ。

 中学校からいまに至るまで常に勉強の場に自らを置き続けたA。中学校から彼を知る人は別の角度から今回の事件を見た。

「勉強に逃げたかったのかもしれませんよ。Aくんの同級生が中学1年生のときに飛び降り自殺をしたんですよ。それもAくんが当時住んでいたところからすぐ近くのマンションでね。それだけじゃなく、その自殺の原因が学校内でのいじめにあるかどうかで、市と遺族側が対立しましてね。

 そんなこともあって、毎年何か思い出したことはないか、と当時の同級生に対してアンケートのような意見書が最近まで来とったんよ。だから、あの学年は、ちょっとどんよりしてるというか、あの年で死というものを近くに抱え続けていたのかもしれない」

 歪んだ競争原理の淵にAを立たせ、蛮行へと走らせたものは何だったのか。警察の取り調べに当初は応じていたAだったが、現在、検察官の調べにも言葉数は少ないという。原因究明には時間がかかりそうだ。

※女性セブン2022年2月3日号

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト