若手女優の中でも屈指の存在とされる清原果耶の新作はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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清原果耶さんが民放ドラマに初主演ということで注目を集める『ファイトソング』(TBS系 火曜午後10時)。昨年はNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で大活躍した清原さんだけあって、期待は大きく膨らみます。
そもそも清原さんがまだ19才とはびっくり。やにわには信じられない落ち着き。受け答えも大人びています。朝ドラの百音という主人公は、内省的で引っ込み思案なタイプでしたが、その百音の特性を的確に理解し上手に演じ切った清原さん。
さて、今回はヒューマンラブコメの主人公です。いかにこなすのか、こなせるのか。優等生的イメージを「崩す」ことができるのか、「落ちこぼれの側面や常識からのズレ」といった要素を演じることができるのか、興味津々です。
『ファイトソング』の物語は--主人公・木皿花枝(清原)は幼少期に母を亡くし父は家出してしまい、児童養護施設で育てられた。唯一熱中できるのが空手。日本代表を目指し勝ち上がっていくが、突如交通事故で夢を絶たれてしまう。しかも、事故の影響で聴神経腫瘍を患い、耳が聴こえなくなるのではとおびえて--。
清原さん、まず第一話でさすがの運動神経を見せつけました。
スポ根空手女子としての切れ味の良さ。構えの型に上段廻し蹴りと、股関節もしっかり開き腰が据わっている。そういえば以前、時代劇『螢草 菜々の剣』(NHKBS)で見せてくれた着物姿の鮮やかな殺陣を思い出しました。
清原さんはそもそも運動が好きだそうで体育の成績は「5」とか。
役者にとって「身体が自由に動く」という点はものすごく大きなアドバンテージです。注目の新人や人気女優はたくさんいるけれど、身体性の高さをアピールできる人ってそうそういない。
では、肝心の演技の方はどうでしょうか? 今回のドラマで芸幅を広げることができるのか。
花枝というキャラクターは、やわくない。幼い時から苦労を背負い、夢に破れて挫折。やる気を無くしぐうたらしているが、根は明るくスポ根で逆境を跳ね飛ばす勢いもあり、清掃業を仕事にしている--たしかにこれまでの清原さんのイメージとは一味違う「新境地」と言えそうです。
花枝の部屋は散らかり放題、フリースにちょんまげのラフな格好で、鏡に向かって変顔してみたりと、フラットな三枚目に挑む清原さん。前とは違う役柄にサラリとなりきれていて、妙な力みも嫌みもないあたり、器の大きさを感じます。
清原さん自身、「自分はこういうタイプ」と決めつけていない自由な感じも伝わってきます。まだ極悪人役や犯罪者役といった難しい領域に踏み込んでいないので、演技者として未知数の部分もありますが……。