国内

東大理IIIという別世界 秀才であるがゆえに抱えるリスクとは

受験生が切り付けられた現場を調べる捜査員ら。逮捕された少年は在籍する高校の偏差値を叫んでいたという(時事通信フォト)

受験生が切り付けられた現場を調べる捜査員ら。逮捕された少年は在籍する高校の偏差値を叫んでいたという(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスオミクロン株の拡大により濃厚接触者の入試方法が変更されるなど注目を集めていた2022年の大学入学共通テストは、初日に起きた東京大学前の刺傷事件によって、別の関心も集めることとなった。殺人未遂で現行犯逮捕された名古屋市在住の私立高校2年生の少年は事件の目撃者によれば、事件時に高校の偏差値や「僕は来年東大を受けるんです」と叫んでいたという。警察で「医者を目指し東大(理III)に入りたかったが、約1年前から成績が振るわず自信をなくした」と話していることが報じられ、動機と起こした事件のちぐはぐさに驚かされた人も多いだろう。俳人で著作家の日野百草氏が、東大に入ることを当然と考える子供たちがどんな心の闇を抱えるリスクを背負うのか探った。

 * * *
「東大に入れなければ負けです。極端ですが日本のトップ校の子というのはそういうものです。とくに理IIIは別格です」

 そう言ってのけるだけのトップ校を卒業した教育関連企業のベテラン室長が語る。

「日本のトップ校というのは田舎の公立進学校の話ではありません。本当に日本のトップ、選ばれた子供たちが通う学校のことです」

 それは開成、灘、筑波大学附属駒場(以下、筑駒)、桜蔭、ラ・サール(鹿児島)、麻布、東大寺、洛南、甲陽学院、東海(愛知)といったテレビでもお馴染み、全国区のトップ私学だという。東大、まして理IIIとなるとこうした中学から(高校入学もまれにある)一貫校に入る道を選ぶことが多い。もちろん地域によっては地元公立のナンバースクール以外選択肢のないところもある。本稿では便宜上、東大に入ることが当然のような日本の最上位層の私学を「トップ校」としている。

「日本でトップを競う子たちです。口には出さずとも小中時代は誰もが東大、とくに理IIIを目指します。東大生は珍しくもありませんが、理IIIとなると別です」

 あえて平易に書くが、東大の理III(理科III類)とはいわゆる東大医学部のこと。日本国の受験でもっとも難しいとされている。実際、日本の大学受験の最高偏差値は常に理IIIである。定員はわずか100人。

「勉強で勝ち続けた受験エリートが集まる学校ですから、できれば一番偏差値の高い大学の、一番偏差値の高い学部に入りたい、それが理IIIなわけです。プロ野球とかと同じ構図ですね」

 なるほど、確かにプロ野球も強豪校には少年野球のエリートが来る。その中でプロになる子は一握りどころかひとつまみ、東大理IIIも毎年の合格者が約100人と考えればプロ野球も全12球団で毎年約120人(例外あり)がドラフトに掛かるわけで、そのジャンル別の難易度はともあれ数字の上では似ているかもしれない。

「はい。野球やサッカーのエリートがプロを目指すように、受験のエリートは理IIIを目指します。あくまで最初は、ですが」

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン