1月15日にトンガ沖で起きた海底火山の噴火は、8000kmも離れた日本にまで予期せぬ影響をもたらした。
噴火が発生した当初、気象庁は「津波による被害の心配はない」と発表したが、その後、潮位の上昇を観測。16日未明になって各地に「津波警報」「津波注意報」が発令され、テレビには繰り返し「にげて!」のテロップが流された。
結果的に日本に到達した津波は高さ最大1.2mを記録し、高知県や徳島県などで、約30隻の漁船が転覆するなどの被害が発生した。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学氏が語る。
「現時点では、海底火山の噴火に伴って気圧が大幅に変動し、それによって海面が上下したことで津波が発生したと考えていますが、正確な原因はまだ特定できていません」
気象庁にとっても想定外の事態で、16日の会見では「この潮位変化が津波かどうかも不明」「メカニズムが分からない」と異例のコメントを出した。
ジオリブ研究所所長で神戸大学名誉教授(同大海洋底探査センター客員教授)の巽好幸氏が語る。
「海中にある火山が噴火した場合、山が崩れる(山体崩壊)ことで津波が起こることは分かっていましたが、今回の津波発生のメカニズムは今まで認識されたことがないものでした。またトンガの海底火山噴火で、太平洋のどこかで津波が発生した場合には、後から来る波と重ね合わさることで、日本列島沿岸地域は太平洋の島々と比べて波高が高くなることも確認されました。今後はこうしたことにも警戒が必要です」
実際、60年に起きたチリ地震では、22時間後に日本列島沿岸に津波が到達し、三陸海岸では高さ6mを記録。142人の死者・行方不明者を出す惨事となった。
海底火山の噴火は、地上の火山が噴火した時以上に深刻な被害を及ぼすことがある。2021年8月に小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火した際は、軽石が海流に乗って日本の沿岸に漂着し、地域住民が除去作業に追われた。
小笠原とはほど遠い台湾でも、昨年11月ごろから福徳岡ノ場の噴火で発生した軽石が確認され、漁業被害に見舞われた。
「今回のトンガ沖の噴火でも、黒潮や対馬海流に乗って軽石が日本に漂着する可能性はゼロではありません」(高橋氏)