生活支援を必要とするフルタイム従業員が多いなど、雇用や労働環境についてたびたび非難されているインターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コム。批判の一方で、世界の覇権を目指すアマゾンの物流システムには驚嘆するしかない。俳人で著作家の日野百草氏が、アマゾンがロジスティックの巨人としての力を発揮する背景と、買い負ける日本が学ぶべき方向性について探った。
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「アマゾンフレックス、いろいろ言われてますけど凄いシステムですよ」
関東で一人親方として運送業を手掛けているドライバーが語ってくれた。彼はかつてアマゾンフレックス、いわゆるアマゾンの直接業務委託契約をしていた。そう聞くと、Uber EATSのような仕組みが思い浮かべるかもしれないが、軽貨物車両を所有していることが条件なので法律を無視したグループが参入する懸念はほとんどないとされている。
「デフォルトが『置き配』というのがアマゾン最大の武器です。ECサイトにおける売上拡大につながってます。また独自の配送アプリの開発で多くの荷物を短時間に誰でも配る事ができます。人間が配るものなのでセンスと体力次第ですけどね」
通常の宅配は、配達員が届け先に荷物を手渡しするのが基本だが、玄関先や宅配ボックスなど指定の場所に荷物を置いて配達完了とするのが「置き配」だ。最近は多くの通販や宅配業者で採用されている仕組みだが、手渡しが基本で置き配はオプション。まず置き配が選択肢というのはアマゾンならではだ。もちろん批判もある。「いろいろ言われて」という部分は配達員も利用する側も重々承知だろう。それでも全世界で40万人の配送ドライバーがアマゾンの仕事を請け負っている。
「アマゾンフレックスは多量の荷物を効率よく配送できます。たまにとんでもないところに連れていかれますが(笑)、国内のあらゆる物流会社がありながら、どこも追いつける気配すらない。システムの進化は 配送員の収入をアップさせます。その環境を創り上げる仕組み、ビジネスデザインの秀逸さですね」
筆者も同感である。アマゾン、本当に凄い。従来の大手宅配業者は基本的に営業所という物理的な拠点を軸に、配達員の手配をしてきた。それを専用アプリひとつで実行し人手と時間を削減している。そして筆者は思うのだ。こうしたアマゾンの戦略は本来、日本がすべきことだったはずと。アマゾンの裏にはアメリカの国を挙げての全面協力がある。官民の露骨なまでの協調、これは中国も同様だ。戦争は綺麗事では勝てない。