「人生、努力だけではどうにもならないことは、身をもって知っている」──女優・南果歩(58才)は力強くこう話す。2度の結婚に2度の離婚、さらには病気や人生の大波を乗り越えた彼女は、12年ぶりのエッセイ『乙女オバさん』でその半生を綴り、いま、やっと穏やかな日々を取り戻そうとしている。
「こんばんは、お元気でしたか?」
かつては愛し合い、生活を共にした男女。さまざまな事情から、別の人生を歩むことを選択した2人であっても、長い年月を経て異国の地で再会すると、口をついて出るのは、こんな他人行儀な言葉なのかもしれない。
2020年1月のある日、南の姿は、フランス・パリの瀟洒なアパートにあった。そこで彼女を出迎えたのは、作家・ミュージシャンの元夫、辻仁成(62才)だ。2人が5年間の結婚生活に終止符を打ったのは、2000年のこと。その後は、一度も顔を合わせたことがなかった。
辻の自宅に招かれた南が元夫と対面したとき、柔らかな笑みをたたえながら口にしたのが、冒頭のあいさつ。そこに、怒りや悲しみは微塵もなかった。
実に20年ぶりとなった南と辻の再会。食事会のテーブルに並んだのは、辻の手料理だった。前菜に始まり、メイン、締めの蕎麦まであるコース料理。結婚生活を送っていたときは、キッチンに立つことなどなかった辻がテキパキと料理をする様子を目にして、南は驚いたという。再会のきっかけになったのは、1995年に辻との間に授かった一人息子のこんな一言だった。
「ハーフブラザーに会いたいんだ」
辻には、南の後に結婚した、女優・中山美穂(51才)との間にも息子がいる。南の息子が会いたがったのは、彼の9才年下のハーフブラザー、つまり異母弟だ。