北朝鮮では自動車は一般庶民には手が届かないもので、車を所有しているのは裕福なエリート層か、軍か国有企業による公用車に限られている。にもかかわらずいま、路上に放置されている自動車やトラックが目立っているという。
北朝鮮では、国連による経済制裁や新型コロナウイルスによる国境封鎖などのためガソリン不足となっているほか、新しいタイヤも国内に入らない状態だ。既存のタイヤは消耗してパンクしているおり、車が動かせないため、路上に放置するしかないのだ。
北朝鮮の企業関係者が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に明らかにしたところでは、北朝鮮でのタイヤの不足が、企業の通常業務を麻痺させているという。
北朝鮮ではタイヤの国内生産はわずかで、それも軍や朝鮮労働党最高幹部の公用車に優先的に回されるので、一般の企業の車はほとんどが中国製のタイヤに頼っている。
しかし、2020年初めの新型コロナウイルスの感染拡大による2年にわたる中国との国境封鎖と貿易禁止で、新品のタイヤは非常に珍しいものとなり、中古のタイヤでさえも見つけるのが難しい。いまや車は何カ月も路上に放置されている状態だと、北朝鮮北東部の咸鏡北道の運送会社関係者はRFAに明らかにしている。
この運送会社では所有する4台のトラックのうち、2台はタイヤ不足のために使用できないという。
ドライバーはトレッドが磨り減るまで同じタイヤを使うため、パンクしたり破れたりしたタイヤには古いタイヤチューブの小片をかぶせて再利用するのが普通になっている。しかし、最近ではラバー部分がすり減り過ぎて、タイヤは再生不可能となり、車も使用できなくなっているという。
RFAは「いまでは企業の生産活動は停滞し、ほとんどの企業にとって業績は落ち込んでおり、国家が決めた経済ノルマの達成は不可能で、このしわ寄せで、一般の従業員の給料は遅配を繰り返しており、北朝鮮の人々の生活は苦しくなるばかりだ」と伝えている。