1月24日、ついにレギュラーガソリンの全国平均小売価格が170円を超えた。「長いコロナ不況で苦しいのに、ガソリン価格だけは右肩上がり。もう、ただのサラリーマンでは自家用車なんて持てないのかな」──そんな嘆きが、あちこちで聞かれるようになってきた。
自動車業界は、燃料費の高騰だけが問題ではない。2年間も続いた未曾有の新型コロナウイルス禍。2022年こそは、ここまで控えられた分の“リベンジ消費”に期待がかかっていたが、蓋を開けてみると、買えるものも買えない状況に陥っている。
都内のあるトヨタ系自動車販売店の営業マンは「コロナの世界的流行によって、半導体を生産する工場が、操業を何度も停止。部品供給が滞って、自動車工場もやむなく減産。去年8月に14年ぶりに全面改良したランドクルーザー(300系)も、問い合わせや注文は殺到しているのですが、納期は約4年後とお答えしているところなのです」と、肩を落としながら明かした。
あるモータージャーナリストは「もともとランドクルーザーのセールスは、ほとんど海外。全生産の半分は中東、ロシアと豪州でも40%を占めて、日本の割合はわずか数%。供給台数が少ないので、さらに納期が遅れるのです」と補足した。さまざまな理由が重なって、新車の供給量で苦戦しているというのだ。
また、高級車の代名詞でもあるメルセデス・ベンツの価格も上がってきている。かつて、400万円台から手を出すことのできたベンツCクラスは、「サラリーマンでも頑張ればベンツに乗れる象徴」として、多くのメルセデスユーザーを生んできた。しかし、昨年7年ぶりにフルモデルチェンジしたCクラスは、最低価格でも650万円以上。150万円以上の値上がりとなった。日本人の平均年収が約430万円(国税庁の「令和2年分 民間給与実態調査統計」より)だということを考えると、もはや「サラリーマンでは手が出せない超高級車」になってしまった。
「しかも、そのベンツCクラスは半導体の不足により、当初予定していた装備が一部変更になっています。今後発売のロットは、高級スピーカーのブルメスターはオプションでも装着不可となり、トランクの下に足を入れると自動で開く『フットトランクオープナー』が付かないモデルもあります。しかもこれから新規発注すると納期は半年以上先とか……。AクラスやBクラスと比べて高級感があり、『ベビーSクラス』や『コンパクトSクラス』と言われていたCクラス。これだけ高額になったうえ、この仕様変更で購入を迷う人もいるかもしれませんね」(前出・モータージャーナリスト)
もちろん、これらの変更はコロナ禍においては致し方ないこと。むしろ、半導体不足の中で、各自動車メーカーは新車を発売するために全力を注いでいるとは言える。一方で、車を購入予定の人の中には「新車が値上がりしたり納期に時間がかかる今、中古車はどうなの?」という気持ちになる人もいるかもしれない。だが、新車の供給不足の反動から、中古車市場は需要が高まり、値段も高騰している。