社会への怒り
中島と松山の作品の根底には共通することがある。それは“社会への怒り”だ。
「中島さんは、『ファイト!』や『宙船』に代表されるように、集団から孤立したり、いじめられたり、はみ出したりしているような人のための歌を書いていると思います。それは、彼女が10代の頃に歌を書き始めた頃から、ずっと変わっていないですね」(前田さん)
松山の場合は、世の中に対しての不条理や不平等に対抗するスタンスを貫いてきたと、渡邉さんは言う。
「いまの給付金問題でも、子供たちに将来、こんな借金を残してどうするんだ、というような政治的な発言を常に逃げずに堂々としてきています。彼の根底にはおかしなものをおかしいとはっきり言う社会正義のような信念がありますね」
聴く人の心に寄り添い、時には弱者の代弁でもあるような歌を作り続けてきた中島と松山。大スターになっても貫いてきた信念があるからこそ、二人の歌は私たちの心にダイレクトに突き刺さるのだろう。
【プロフィール】
中島みゆき(なかじま・みゆき)/1952年2月23日生まれ、北海道札幌市出身。本名・中島美雪。1975年『アザミ嬢のララバイ』でデビュー。同年、『時代』で世界歌謡祭グランプリ受賞。現在までに46枚のシングル、43枚のオリジナルアルバムを発表している。テレビや映画などの主題歌のほか、ほかのアーティストへの楽曲提供も行っている。
松山千春(まつやま・ちはる)/1955年12月16日生まれ、北海道足寄町出身。1977年『旅立ち』でデビュー。1982年の5万人コンサート『大いなる愛よ夢よ1982』が大きな話題を呼ぶ。昨年10月27日に通算82枚目のシングル『敢然・漠然・茫然』をリリース。今年、デビュー45周年を迎えた。北海道在住。
参議院議員・鈴木宗男さん/1948年、北海道出身。松山千春と同じく足寄生まれで、松山とは40年以上家族ぐるみのつきあいをしている。代表を務める『新党大地』は、松山が命名した。
喫茶店「ミルク」オーナー・前田重和さん/1947年、北海道出身。学生時代から中島みゆきと交流を持つ。札幌市で経営する喫茶店「ミルク」は中島の曲『ミルク32』のモデルといわれる。
芸能ジャーナリスト・渡邉裕二さん/1961年、静岡県出身。松山千春の自伝小説『足寄より』(扶桑社)を基に、ドラマやCD、映画、舞台などを企画、プロデュースした。
取材・文/廉屋友美乃 取材/北武司
※女性セブン2022年2月10日号