感染者の激増と病床使用率の急上昇のため、さすがに危機感が広がっている新型コロナウイルスの第6波だが、今回の主役となっている変異種オミクロン株は当初、感染力は強いが重症化しづらいという評判のために「大したことない」と感染予防を軽んじる人が続出してしまった。ライターの森鷹久氏が、「オミクロン株なんて大したことない」と言いつつ感染した飲食店主の後悔と不安を聞いた。
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「オミクロン株なんて、風邪と一緒だろう? マスコミが煽りすぎるからいけないんだ」
2021年末に訪れた東京都内の飲食店で、店の経営者である藤原哲さん(仮名・40代)は筆者にこう言い放った。筆者が一応「マスコミ」側であることも承知した上での発言であることは明白で、当然居心地は悪かったが、忌憚なき「マスコミ批判」は、藤原さんの本音であることもまた事実だった。
その後、オミクロン株の感染者が増え、都内では1日に1万人以上の感染者が出るなど過去最多を記録。飲食店は、またもや「時短営業」などの制限を要請されるなどし、経営者らからは不満の声が相次いでいる。
そんな折、藤原さんからきた連絡は、筆者にとっても意外なものだった。藤原さん自身がオミクロン株に感染してしまい、仕事を休むだけでなく、家族全員が感染し社会と完全に切り離された、そう落胆していたのだ。「オミクロンは単なる風邪でしたか?」と、意地悪な質問をしてみたが、電話口の藤原さんは意気消沈といった感じで、言い返すこともできない様子だった。
「いや……確かにオミクロンは風邪というか、そんな生やさしいものではなく、インフルエンザに近い。熱は39度まで上がり、咳も頭痛もひどい。倦怠感が抜けず、悪寒がするので布団から出られない」(藤原さん)
現時点で、藤原さんの感染ルートははっきりとしていない。いや、保健所に問い合わせても「今は感染ルートの追跡は行っていない」と言われるばかりで、もし自身の濃厚接触者がいた場合は、藤原さん自身で連絡するよう指示されただけ。そのことに初めは憤慨していたというが、現実に起こったことに打ちひしがれていたと漏らす。
「コロナが風邪、というのは正直なところ今もそう思っているし、自分の症状はインフルエンザそのもので、やはりきつかった。それ以上に大変だったのは、職場にも家族にも、そして子供達にも大きすぎる影響を与えてしまったことです」(藤原さん)