香港では2020年7月の香港国家安全法の施行後、報道や結社の自由などが制限されるようになっているが、さらに今年に入って大学への締め付けが強まっていることが明らかになっている。これまで各大学で認められていた学生自治会(学生会)の活動が大学当局により不認可となるケースが増えているほか、今年9月開始の新年度から愛国主義教育の科目が新設され、単位をとらないと卒業できないという規定が新たに適用されることになった。
学生らは「明らかに中国当局の差し金で、学生の民主的な活動を停止させることを目的としている」と反発しており、大学側との対立が激しくなりそうだ。香港のインターネットメディア「香港01」などが報じた。
香港教育大学は、職員と学生への公開の電子メールで、「大学は今後、香港教育大学学生連合会を認可しない」と通告。この理由として、連合会の運営委員の選挙が公正でないためだなどとしている。
同大の連合会は1995年5月に正式に設立され、学生のためにさまざまな活動サポートを提供するほか、大学の委員会に参加する学生代表を推薦するなど大学の運営事項の策定に関わってきたが、今後は連合会の委員を学生の代表とは認めないということになる。
これに伴い、大学側は今後、学生連合会が学内で使用している施設の使用を許可せず、会費の徴収代行も停止することを一方的に通告した。また、連合会の900万香港ドル(約1億3300万円)の資金は、「一時的に」大学の財務局に引き渡されることになるという。
大学による学生自治会の「不認可」については教育大学だけではない。香港大学や香港中文大学、城市大学、理工大学、嶺南大学、バプティスト大学はすでに今年度から学生組合の会費徴収を止めており、学生自治会は実質的に活動停止となっている。
また、各大学は新年度から愛国主義的な「国家安全教育」を導入することを決定しており、大学1年時から4年時までの4年間で毎年、「今日の中国を理解する」とのコースを修了しないと卒業できないことになっている。
このような学生への締め付けは、昨年6月までの1年間で、デモ参加の逮捕者9200人のうち4割以上を大学生が占めていたことが背景にあるとみられている。