小田急電鉄の駅や駅近にある、駅利用のついでに買ってゆくイメージの強いパン屋「HOKUO」が、2022年2月末をもって全店舗の営業を終了、うち10店舗を日本で初めて本格的なフランスパン販売をしたことで知られるドンクへ事業譲渡されると発表されたのが2021年12月。コロナ禍でもパンブームは続いていると言われているのに、なぜ小田急電鉄は30年以上親しまれてきたパン屋を手放すことにしたのか。ライターの小川裕夫氏が、小田急がHOKUO営業終了を決めた理由を聞いた。
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昨年末、小田急電鉄は人気の高いロマンスカー50000形VSEの引退を発表。”白いロマンスカー”で親しまれたVSEは、今年3月で定期運行から退く。そして、2023年秋頃に完全に姿を消す。
小田急電鉄CSR・広報部の担当者は、引退の理由を「VSEの車体はアルミ合金押出形材でダブルスキンという特殊な構造です。古い車両は部品の調達などが困難ですが、特にVSEは部品の調達のみならず修理にも手間がかかってしまうことが引退の理由です」と説明する。
VSEは2005年に登場。まだ17年しか活躍していない。一般的に鉄道車両は30年ほど使用される。それだけに、VSEの早すぎる引退は小田急ユーザーや鉄道ファンを騒然とさせた。公式には特殊な構造が理由に挙げられているが、利用者の激減による経営環境の激変も影響を及ぼしたであろう。
売上減を受け、鉄道事業者が経営体質をスリム化するために無駄の削減に取り組む。今春のダイヤ改正で各社は大幅な減便を発表しているが、人件費や燃料代などの抑制が目的だろう。しかし、それにも限界がある。鉄道各社は所有財産の整理を始めており、これまでシナジー効果を生むとされてきた事業部門や子会社・系列会社にもメスを入れ始めた。
「コロナ禍により、小田急のベーカリーショップ『HOKUO』は大幅に売り上げを減少させています。コンビニとの競争も激しく、東京工場や不採算店舗の閉鎖といった構造改革にも着手しました。それでも、コロナが落ち着く様子はありません。今後も事業環境が好転する見込みは立ちません。それらの状況を踏まえ、39店舗のうち10店舗をパン製造・レストラン経営の老舗であるドンクへと譲渡することを決定しました。残り29店舗の今後は、現段階で未定です」(同)