先日他界した石原慎太郎氏はベストセラー『「NO」と言える日本』(共著)で対米自立を訴えたが、現在の日本が問われるのは、むしろ膨張する中国への姿勢である。果たして岸田首相は、中国に毅然ともの申せるのか。歴代政権を見続けてきた田原総一朗氏と、安倍政権で内閣官房参与を務めた藤井聡・京都大学大学院教授が激論を交わした。【全3回の第1回】
台湾問題は尖閣問題
藤井:中国が台湾に侵攻する可能性が日に日に高まっていますが、これは我が国にとっても、極めて重要な外交課題です。中国にとっては、「台湾は中国の一部、尖閣は台湾の一部」なので、イコール「尖閣は中国の一部」であり、台湾有事が起きれば、同時に尖閣有事も想定する必要がある。それがわかっていなくて、台湾有事を他人事のように考えている政治家や有識者が多い。
田原:台湾有事、尖閣有事についてアメリカはどう考えているか。バイデン大統領は、就任して最初の会談相手に日本の菅義偉・首相(当時)を選んだ(2021年4月16日)。今までは米英、米仏のあとの3番目か4番目だったのが、最初に日米をもってきたのですが、これは前代未聞なんです。
藤井:それほど日本を重視している。というよりも、台湾有事をアメリカの国益の根幹に位置する問題と認識し、その文脈で日本を重視している。
田原:そうです。ここで話し合われたことは極めて重要で、公開されていませんが、私はその筋から聞いている。
このままだと中国は2024~25年ごろに台湾に侵攻するが、日本はどう対応するのかとバイデンは菅首相に迫ったそうです。日米同盟があるから日本は中国を叩かなければならないが、そういう事態を避けるにはどうすべきかがバイデン・菅対談のテーマだった。
藤井:台湾有事が起きる必要条件のひとつは、中国から仕掛けて勝てる見込みがあると、中国が瀬踏みすることです。つまり、習近平が「米軍は大して動かない」「自衛隊も恐るるに足らず」と判断することが条件のひとつ。
だから、戦争を起こさないためには、台湾有事が起きればアメリカは毅然とした態度を絶対に取るとバイデンが宣言し、かつ、そうなったときには日本も徹底的に戦うと宣言することです。
ところが、岸田さんは中国に対して、中途半端で曖昧な態度を取り続けているように見える。