北京五輪には、メダル獲得を目指す日本のトップアスリートたちが次々と登場する。そうした世界が注目する華やかな舞台の裏には、選手を陰ながら支えてきた「用具職人」たちの地道な努力があった──。
安藤麻らの活躍が期待されるスキー・アルペン競技。デサントは、イルカの皮膚からヒントを得た、表面に縦の溝が入った「ドルフィンスキン」と呼ばれる空気抵抗を抑えたレーシングジャケットの製作を担当している。同社のPR推進課はこう説明する。
「空気抵抗の削減も重要ですが、天候や気温、ゲレンデの状態により選手はターンの仕方や姿勢を調整して滑ります。データ上の数値の良し悪しだけでなく、選手の動きやすさやウェアとの相性も重要です。縫製には技術力が求められるため、日本選手分は国内の自社工場で縫製を行なっています」
コロナ禍でのサポートにぬかりはない。
「通常はウェアの修理や選手の直前の体形変化にすぐに対応できるよう担当者がミシンを持って現地入りしているが、今回はコロナ対応で制限が厳しく同行できません。北京の自社工場と連携し、できる限りの対応をする予定です」(同前)
2020~2021年シーズンの出場3大会すべてで優勝を飾った戸塚優斗、スケートボードと二刀流の平野歩夢が出場するスノーボード・ハーフパイプのオフィシャルウェアはヨネックスが担当している。日本の複数のスポーツメーカーにとって、冬季五輪は“腕の見せどころ”なのだ。
大阪・守口市に本社がある「マテリアルスポーツ」は、「ID one」のブランドで、人工のコブの急斜面を滑走するフリースタイルスキーのモーグルで使うモーグル板を製造。開幕してすぐに本番を迎えた堀島行真、「上村愛子二世」といわれる川村あんりなど、北京五輪代表の男女8選手のうち7選手が同社の板を使っている。
元々ゴーグルの販売代理店だったが、2000年に藤本誠社長が上村愛子にモーグル板を提供するためにゼロから立ち上げたブランドで、エッジに刻みを入れてしなるクラックドエッジを採用し、理想的な形状やバランスで瞬く間にトップブランドになった。