北京大学国際戦略研究所は1月下旬、「中米(米中)技術開発競争に関する研究」を発表し、「両国とも対立によるデカップリング(分離)で苦しんでいるが、中国は米国よりかなり多くのものを失っており、中国のいくつかの重要な技術開発が行き詰まる可能性がある」と指摘し、米中間の技術開発競争は中国にとって不利な方向に進んでいるとの見方を明らかにした。
米ハーバード大学国際科学研究センターが昨年12月に発表した研究報告では、「中国はすでに米国を抜いて世界最大のハイテク製品生産国となっており、今後10年間で人工知能、量子情報技術、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギーなどの分野で米国を超えるか、飛躍的な発展を遂げる」と結論付けているが、北京大の報告は全く逆の結果を導き出している。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北京大の研究報告書はまず前提としてこう指摘する。
「2017年末以降、米国の対中政策が大きく変化し、貿易摩擦や技術競争が徐々に両国関係の焦点となっているが、中国は自主的なイノベーション能力を強化し、重要な核となる技術をマスターし、イノベーション大国になろうと努力している。
一方、米国は、中国が米国企業に対して中国への技術移転を強要し、米国の知的財産権を盗んでいるなどとして、中国を激しく批判しており、先端技術開発は米中間の競争と対抗の主要な舞台となっている」
そのうえで、報告書は米中両国の情報技術、人工知能、航空宇宙などの技術力、資本投資、人材獲得競争などについて、項目別にそれぞれ比較。「中国は2017年末以降、世界で唯一、総合的な技術力が飛躍的に向上している国家であり、世界のなかで最も影響力のある技術立国のひとつとなった」と指摘ながらも、「中国が今後『技術立国』から『技術大国』になるには、まだまだ長い道のりを歩まなければならない。その点、 米国は依然として技術力において世界をリードしている」と結論付けている。
米国ではトランプ政権時代、ペンス副大統領が「近い将来、中国が経済力や技術力などで米国を上回り、経済安全保障上、大きな脅威となる」などと見方を明らかにしていたが、北京大学の研究報告はこれとは全く逆だけに、ネット上では「米国内で中国は脅威とする見方を否定しようとの策略の一環」との指摘も出ている。