Netflixの連続ドラマ『新聞記者』は、米倉涼子演じるエース記者が政府の公文書改竄事件を舞台に権力の闇に迫る物語だが、当の新聞記者たちからは「いまどきあんな記者、いるわけないよ」とため息も聞こえてくる。
政治部や社会部の記者といえば、社旗をはためかせた黒塗りのハイヤーを使い、夜討ち朝駆け取材から“合コン”にまで乗り付けるという時代が長かった。現在は、「政治部の番記者や社会部のP担(検察担当)や遊軍はハイヤーを使えるが、台数が減らされているからある程度の必要性がないと使えない」(社会部記者)というが、デジタル部門に異動した中には“ハイヤー乗り放題”時代に現場を担当した50代の元デスククラスもいる。
「異動するとエクセルやパワーポイントの使い方をいちから教わる『ビジネススキル講習』があったり、ウェブ解析士という資格を取らされたり。いかに記者に普通のサラリーマンのスキルがないかがわかってしまう。たまりかねて記者職に出戻った人もいます」(同前)
デジタル事業とともに加速しているのがイベント事業だ。新聞社の収益の重要な柱となっている。
「広告営業では新聞社のブランドを活かしてスポンサーを募り、イベントをどんどん増やしています。もちろん開催したイベントは記事化する。
SNSと同様に、読者との双方向に力を入れているため、様々な部署でオンラインイベントなどを乱立させています。上からやみくもに『イベントをやれ』と言われてスポンサーもないなか強行してパンクしたケースもあります」(元社会部記者)
そうした新聞のデジタル化、読者との双方向化で取材の方法は根本的に変わってきた。「足でネタを拾う」のではなく、SNSを使って読者からネットの気になるネタなど「お題」(読みたいテーマ)を募ってから取材する。朝日の「withnews」や産経の「きっかけ取材班」などが知られる。