ビジネス

「長年の王者」TBSラジオの苦戦 フジテレビと共通する“栄華の弊害”も

TBSラジオの聴取率調査の首位陥落は必然だったのか

TBSラジオの聴取率調査の首位陥落は必然だったのか

 長年の王者が凋落する共通点とは──。昨年6月の『首都圏ラジオ個人聴取率調査』で、20年ぶりに首位の座を追われたTBSラジオ。8月にはTOKYO FMと同率1位だったが、10月と12月には再び2位に下落した。ラジオ局関係者は「必然といえば必然」と淡々と振り返る。

「2018年に三村孝成社長が就任してから『聴取率調査』週間を重視しなくなりました。ラジオ局はいつもその時期は“スペシャルウィーク”と銘打って、豪華なゲストを呼んだり、リスナーへのプレゼントをしたりします。TBSラジオはそれを辞めたんです。三村社長は、ラジオへの評価の基軸をradiko(ラジコ)などを使って番組への延べ接触人数がわかる『ラジオ365データ』に変えました」

 TBSラジオは方向転換したが、他のラジオ局はいまだに『聴取率調査』週間に重きを置いている。

「もちろん、他局もradikoなどの数字を重視していますよ。ただ、radikoではなくてラジオ本体で聞いている人もたくさんいる。特に昔からのラジオ好きや高齢者はそうでしょう。どちらのデータも併用すればいいのに、三村社長は『聴取率調査』を気にしない方針にした。うがった見方をすれば、トップから落ちることを予見していたのかもしれません。ちなみに、2021年度のradikoのユニークユーザー数では首都圏全局の中でニッポン放送が月間首位を何度も獲得しています」

 TBSラジオは午前中は生島ヒロシ、森本毅郎、大沢悠里、午後は荒川強啓というパーソナリティが人気を保ってきた。しかし、盤石の体制のため、新たな番組を生めないというジレンマもあっただろう。

「彼らの番組を立ち上げて人気番組にしていった社員は、いわゆる“ゼロイチ”の仕事をした。何もないところから、どうすれば他局に勝てるか考えて、試行錯誤をした。しかし、タイムテーブルが固定されて動かなくなってから入社した社員は、その流れに乗ればいいだけになる。ゼロから自分たちで番組を作るという経験を若いうちにあまりやることができなかった。その人たちが上の立場になった今、苦戦している状況です」

人気があったゆえに陥るパラドックス

 テレビ業界に目を移せば、フジテレビは1980年代から30年近く栄華を誇っていたが、近年は視聴率争いで上位に顔を出せていない。テレビ局関係者は「人気企業になり過ぎた弊害が出た」と分析する。

「フジは2010年前後に長年、人気番組を作ってきた腕のあるディレクターが退社したり、関連企業に出向したりして、どんどん現場からいなくなり、ノウハウが受け継がれなくなった。フジは豪華なタレントを集めて数字を取りに行くイメージがあったかもしれませんが、優秀な裏方がいたから、彼らの魅力を引き出せていた。企画や構成が見事だったんです。作り手が変わっていったことで、従来の人気番組の視聴率も下がっていき、『笑っていいとも!』や『めちゃ×2イケてるッ!』などの局を代表するコンテンツが終了していった」

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン