2025年に日本社会は大きな転換点を迎える。これまで社会、経済、社会保障から文化まで強い影響を与えてきた「団塊の世代」の約800万人が後期高齢者となり、国民の「5人に1人」が75歳以上、65歳以上は人口の3割を超える“超超”高齢化社会に突入する。わずか3年後に迫った。
75歳以上の後期高齢者は1990年には597万人(人口の5%)にすぎなかったが、2025年には2180万人とざっと4倍に増えると予測されている。それに対し、社会保障や経済活動の“担い手”である20~65歳の人口は同じ期間に1000万人近く減少している。30年前は「現役世代5人で高齢者1人」を支えていたのに、今から3年後には「現役1.8人で高齢者1人」を支えなければならなくなる。
この「2025年問題」は各所で指摘され、政治的にも重要課題になっている。
「団塊の世代」はその上の世代の高齢者とは質的に大きく異なる。戦後のベビーブーマーである彼らは、人口が極端に多いために、生まれながらに日本の社会システムの転換を促してきた“変革者”だからである。
『団塊の楽園』『世代論の教科書』などの著書がある未来ビジョン研究所代表・阪本節郎氏が語る。
「敗戦という時代の変わり目に生まれ、民主主義や欧米のカルチャーに囲まれて成長した。とにかく人数が多く、小学校は1クラス60人くらいのすし詰め、入りきれずに階段を教室として使ったり、午前と午後に分ける2部授業もあった。競争が激しく、受験も睡眠4時間なら受かるが、5時間寝ると落ちる“4当5落”という言葉ができたほど。
戦後民主主義の自由の中で先を争って流行を追いかけ、物質的にも文化的にも我先に新しいものを手に入れようとする。そのパワーは“団塊の世代が歩いた後はぺんぺん草も生えない”と言われるほどであり、古い価値を引きずりながら新しい価値観を併せ持った世代でもある」
日本の教育インフラ、社会インフラはこの世代の成長に合わせて整備されていった。義務教育期間の延長で小中学校、進学率の高まりで高校、大学が増えた。住宅不足解消に公営団地が建設され、団塊の持ち家志向でニュータウン開発も進んだ。
社会に出るときには「金の卵」と呼ばれ、労働力の中核として日本の経済成長を支えてきたことは間違いない。
「大消費者」でもあった。『島耕作』シリーズで団塊世代サラリーマンの出世物語を描いた同世代の漫画家・弘兼憲史氏(1947年生まれ)がいう。
「我々の世代は消費意欲が旺盛で、巨大なマーケットだから経済的に常にスポットライトを浴びた。マンガの発展も、ときわ荘の漫画家たちが団塊世代を読み手として描き、我々がお小遣いで買えるようになると少年サンデーや少年マガジンなどが創刊され、社会人になるとビッグコミックのような青年漫画誌が登場した。しかし、団塊世代が高齢化して稼げなくなると、日本の消費も低迷して経済がしぼんでいった」