人は死んだらどこにいくのか──人類にとって永遠の疑問である「あの世」の正体を解き明かすカギのひとつに、臨死体験がある。生死の境をさまよい、現世に帰還した者たちが、その時に見た不思議な光景を明かした。
「娘が生まれた2日後に、僕は死んじゃったんだ」
和風のアトリエで本誌週刊ポストの取材にこう語るのは、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』などの作品で知られる映画監督の園子温氏(60)だ。園氏は2019年2月7日、心筋梗塞で都内の病院に緊急搬送された。その2日前には妻で女優の神楽坂恵(40)が長女を出産したばかりだった。担架に乗って集中治療室に運ばれるまでは意識があったが、緊急手術でカテーテルを目にした途端に意識がフッと遠のいた。その直後、目の前に不思議な光景が広がったという。
「前も後ろもなく、ただただ気持ちのよい空間を漂ってたんだ。何とも表現のしようがないけど、あえて言うなら、銀河系のようなすごく美しい映像に包まれる感じ。視覚的な映像ではないんだけど、魂で美しさを感じていたんじゃないかな。スピリチュアルな美しさだった」(園氏)
その間、現実世界の園氏は1分間にわたって心肺が停止していた。
「ハッと気づいたら、しみったれた汚い天井が見えた。なんだ、僕はついに地獄に堕ちたのかと思ったら、集中治療室の天井だったの。そんなに古臭い病院じゃなかったんだけどね。あっちがキレイすぎたんだ。僕は集中治療室で寝転がって上を向いて、1分間だけ確かに死んでいた。そしてこの世に戻ってきたんだ」(同前)
長女の出生届と自分の死亡届が同時に出ていたかもしれない──そんな危機を間一髪でくぐり抜けた園氏は、悟ったように語った。
「ひとり生まれたから、ひとり死なないといけなかったのかもしれない。僕は前世研究家でもあり、人生はすべて地続きで死んだら次の人生が待っていると信じるけど、臨死体験で見た宇宙はこの世のモノとまるで違っていた。昨年12月にZOZO創業者の前澤友作さんが宇宙に行ったけど、ロケットで行けちゃう宇宙と臨死で体験する宇宙は全くの別物だよ」(同前)