新ドラマの視聴率トップ争いを繰り広げているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』とフジテレビの月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』には共通点がある。主役級の豪華キャストが何人も並ぶなか、『鎌倉殿』では小池栄子、『ミステリ』では伊藤沙莉と、これまでは脇役のイメージが強かった実力派女優がヒロインに起用されているのだ。
なぜ彼女たちが抜擢されたのか。それにはテレビドラマをめぐる視聴形態の変化が影響しているという。ベテラン芸能ライターが解説する。
「今のドラマはリアルタイムの視聴率だけでなく、NHKであればNHKプラス、民放であればTVerといった見逃し配信、さらにParaviやAmazon Prime Video、Netflixといった動画配信サービスでの視聴者数も重視されています。そうなると、キャスティングの話題性よりも、コンテンツとしての評価が高いほうが幅広い視聴者に届きやすいという考え方にテレビ局がシフトしています。
そうしたなかで、固定ファンの多い若手の人気女優やアイドルではなく、小池さんや伊藤さんのように安定した演技力に定評のある女優がヒロインに起用されるケースが増えています。『鎌倉殿』も『ミステリ』も、ずらりと個性派キャストが並んでいますが、小池さんと伊藤さんが一歩引いた受けの演技をすることで、作品に落ち着きを与えています。彼女たちが長年、脇役として培ってきたキャリアが活きているのでしょう」
昨年12月まで放送されていた『SUPER RICH』(フジテレビ系)で主演を務めた江口のりこなども同様のケースと言える。この流れを決定づけたとされるのが、2018年度後期に放送されたNHK連続テレビ小説『まんぷく』の主演に安藤サクラが起用されたことだ。
「若手人気女優の登竜門とされてきた朝ドラで当時32歳の安藤さんがヒロインを務めると発表された際には、『朝ドラには地味ではないか』と懸念する声が業界内にもありました。しかし、『まんぷく』は総合視聴率において過去5作品で最高となる成功を収め、作品としても高い評価を得ました。以降、『若手女優よりも実力派』のキャスティングが民放にも広がりだしたんです」(同前)