2019年6月、人気ロックバンド・KANA-BOON(カナブーン)のベーシストである飯田祐馬(めしだ・ゆうま。31才)の行方が突如わからなくなったとのニュースが世間に衝撃を与えた。関係者や家族も連絡が取れず、ライブは急遽中止され、警察に捜索願が出された。数日後に無事が確認されるも「精神的な病気」の治療に専念するため音楽活動を休止することが決定し、そのまま11月に同バンドからの脱退が発表された。
実は飯田は今、サウナの熱波師(サウナ室に発生した蒸気をタオルなどで撹拌する役割のこと。アウフギーサーとも呼ぶ)として新たな夢を追っている。KANA-BOON脱退後初めてインタビューを受けるという彼に、現在の生活について語ってもらった。【前後編の前編】
なぜ飯田は熱波師になったのか
──本日は取材を受けてくださり、ありがとうございます。SNS経由での突然の依頼だったので驚かせてしまったと思いますが……。
いえいえ。お声がけくださり、ありがとうございます。本音を言うと、取材をOKすべきか、すごく悩みました。でも熱波師として上を目指して活動していく以上、こういう取材依頼はいつかあるだろうとも思っていました。「僕のその後の消息がわからず心配している方々のためにも、こうやってお話する機会はあったほうがいいんじゃないか」と決断しました。
──現在は兵庫県の「センチュリオンホテル神戸」を拠点としながら、他にオファーがあった施設でも熱波イベントを開催しているそうですね。サウナのお客さんから元KANA-BOONと気づかれませんか?
飯田:基本的に全くバレませんね。「CD買っていました」「武道館ライブ行きました」と声をかけられたこともありますが、意外とそこまでバレていません。最初に働いたサウナ施設では、面接の時点で「マスコミやファンが来たりして施設に迷惑をかけるかもしれません」と自ら伝えたんですよ。それがまぁ誰にも全然気づかれず、逆にちょっと恥ずかしい思いをしたこともありましたが……(笑)。過去を変に隠すのは違うと思っていますが、積極的に気づかれたいわけでもありません。今いるファンの方々は、あくまで僕を“熱波師の飯田”として応援してくれています。
──なぜ熱波師になったんですか?
飯田:もともとサウナ好きで、バンド時代も全国ツアーのついでに47都道府県のサウナを巡ったりしていました。精神的にまいっていた時期も自律神経をととのえるためにサウナに行っていたんですが、1年ほど通ううちに「サウナで働けばタダで入れるやん!」と思いついたんです。最初は大阪の千日前にある「サウナ&カプセルAMZA(アムザ)」という施設でバイトしました。だからバイトも含めると、熱波師になって1年半経ったくらいかな。ちゃんとデビューしたのは去年の10月頃なので、まだ熱波師としてはペーペーです。
精神的な病気が理由で家から出られない時期も長くあって、ずっと人と話せなかったんですが、サウナを通じて他人とまた会話できるようになり、「お客さんを喜ばせたい」という発想も生まれてきました。お客さんのためにタオル捌きを練習しようとか、トークを磨こうとか、アロマで五感を刺激しようとか。一時の状態の悪さを考えると、そういう感情を持てるようになって本当によかった。僕はサウナに救われました。だからこそ、「サウナで人を救いたい」と感じています。