人気ロックバンド・KANA-BOON(カナブーン)のベーシストである飯田祐馬(めしだ・ゆうま。31才)は2019年6月、失踪騒動を経て、「精神的な病気」を理由に音楽活動を休止。そのまま11月に同バンドを脱退した。音楽業界を去った彼は今、サウナの熱波師として活動している。バンド脱退後初めてインタビューに応え、新たな夢を語る飯田の顔は希望に輝いていた。【前後編の後編】
目標に向かって走る今はめちゃくちゃ楽しい
──熱波師として、今の目標は何ですか?
飯田:オランダで開催されているアウフグース(サウナ室に発生した蒸気をタオルなどで撹拌すること。近年はパフォーマンス性も注目されている)の世界大会に出ることです。大会はチームで出場する決まりになっていて、そのために僕がリーダーとなって「チーム素面」というチームを組みました。
ですが、実は国内にはアウフグースのチームが2~3組しか存在しないので、日本大会のトーナメントが成立しないんですよね。だから世界大会に出場するために、まずは国内のサウナ業界をさらに盛り上げる必要があります。
──現在はサウナブームと言われていますが、アウフグースの盛り上がりはまだ足りていないんですね。
飯田:熱波師に注目するのは、サウナ好きの中でもコアな人たちですからね。アウフグースのイベントを開催すると、同じ人が何周もしていることは珍しくありません。そういう熱い人の存在はもちろんありがたいですが、さらに幅広い層にアウフグースを好きになってもらうことが必要だと考えています。
サウナブーム自体もまだ足りないと感じています。施設による部分もありますが、僕が拠点にしている関西は関東ほどサウナ人気が高いわけではなく、お客さんがひとりだけのときも全然あります。だけど「サウナはあまり好きじゃない」というお客さんに試しにアウフグースを受けてもらったら、「楽しかった」と言ってくれたことがありました。そういうふうにサウナに興味がない人がサウナ好きに変わる機会を作っていけたら、サウナブームももっと広いものになるし、アウフグースもスポーツのように注目されるんじゃないでしょうか。
──都内のサウナ施設だと、アウフグースを受けたくてサウナ室の前に行列ができますが、関西はまた状況が違うんですね。
飯田:関西は東京ほどサウナブームが盛り上がっていないぶん、熱波師ひとりひとりが「このお客さんをサウナ好きにしてやる!」と貪欲に考えているかもしれません。あとは施設側にも「熱波師? アルバイトがタオルを振るので十分でしょ?」という意識がまだ強くあります。一方で、ただのアルバイトがめっちゃアウフグース上手かったりする。僕が早く有名になって、そういう人たちをフックアップ(そのジャンルの有名人が埋もれた才能を世間に紹介することを差すヒップホップ用語)していきたい気持ちもあります。