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前田忠明氏、意識不明時に見た風景 亡くなった兄が「こっちこいよ」と手招き

臨死体験をした人の証言には共通点も(イメージ。写真/AFLO)

臨死体験をした人の証言には共通点も(イメージ。写真/AFLO)

 臨死体験は、古くから世界各地の伝承で語られてきた。日本書紀には「黄泉の国」の存在が語られ、ドイツのグリム童話には死の直前に異世界をさまよう物語が複数存在する。しかし客観的な記述や観察が難しいことから、臨死体験は長くオカルトの一部としか扱われてこなかった。

 時代が流れて、1970年代にアメリカの医師キューブラー・ロスらが実証的な研究を進めると、臨死体験は心理学や脳生理学、文化人類学など多様な学問の研究対象となる。1990年には米ジョージタウン大学で臨死体験研究の第一回会議が開かれるなど、世界中で科学的な分析が進んだ。その結果、臨死体験をした人の証言には「川を見た」「花畑の中に立っていた」など、共通のパターンがあることがわかった。

 芸能レポーターの前田忠明氏(80)もそんな光景を見た一人だ。1990年12月、昼食を食べ終えた前田氏の胸を激痛が襲った。すぐにタクシーで最寄りの医大に駆け込み、救急救命室に入って看護師の姿が見えた瞬間、目の前が真っ暗になって意識を失った。

 心肺停止した前田氏はAEDによる2度の電気ショックでなんとか息を吹き返したものの、23時間にわたって意識不明状態が続いた。家族が固唾を呑んで見守る中、前田氏は「不思議な体験をしていた」と振り返る。

「真っ暗だった目の前が自然と明るくなり、体が宙に浮いたような感覚にとらわれました。僕は絵画の額縁のようなところに腰を掛け、目の前に広がる光景を見ていた。そこにはピンクの花がたくさん咲いて、奥にある川は太陽の光を浴びて水面がキラキラと輝いていました」(前田氏)

 美しい風景に心を奪われていると、川の向こうの花畑に前田氏がよく知る人物が現われた。

「心臓が悪く、20代で亡くなった兄貴が僕の名前を呼んで、『忠明、こっちこいよ』と手招きしたんです。それで“ああ、兄貴か、久しぶりだな”と花畑に足を踏み入れようとした瞬間、また周囲が真っ暗になって意識が戻りました。2、3分の感覚だったけど、一日中意識がなかったって聞いて驚きましたよ。

 それまで死後の世界なんてあるわけないと思っていたけど、この不思議な体験をしてから、あの世はあると思うようになったんです。去年亡くなってしまった『臨死体験』の著書がある立花隆さんに、当時この話をしたことがあって。そしたら『ちゅうさん、世界中に同じ体験した人がいるんだ』って言うんです。やっぱり僕だけじゃないんだ、本当なんだと思いましたよ。とにかく綺麗な風景でしたが、兄貴に誘われるまま川を渡っていたら、僕は死の世界に行っていたかもしれません」(同前)

※週刊ポスト2022年3月4日号

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