富士山噴火の現象別に被害範囲や時間予想を読み解く『富士山ハザードマップ』が2021年に改定された。もしも本当に富士山が噴火したならば、富士山周辺の観光客や地域住民はどう逃げるべきなのか。
改定ハザードマップでは想定火口範囲が拡大している。
「なかでも重要なのが、富士吉田市街地(山梨県)から1kmちょっとの地点にある“雁の穴丸尾”という溶岩の火口がわかったことです。溶岩流の速度は遅いものの高温なのですべてを焼き尽くす可能性のある危険なもの。火口がここまで市街地に近いと人口集中地域に短時間で到達します。すぐ近くに大きな病院もありますから、入院されているかたも含め、早めの避難行動が重要になります。
ハザードマップではどこで噴火するとどの地域に影響があるのかがドリルマップ[*]で想定され、それに対応して地域ごとに避難の指示が出されるようになっています」
と話すのは山梨県富士山科学研究所のセンター長・吉本充宏さんだ。
[*富士山ハザードマップで「可能性マップ」とは別に用意された、火口位置や現象別にシミュレートされた具体的予測図。避難時はドリルマップを活用]
溶岩はイラストのような条件で火砕流になることもあり、火砕流が起これば逃げきれないからこそ事前の避難が重要になる。そのカギとなるのが気象庁発表の噴火警戒レベルと市町村の避難情報だ。
火山の避難に詳しい砂防・地すべり技術センターの池谷浩さんはこう語る。
「ただ富士山は山体が大きくて影響範囲も広く、避難対象者数も数十万人と多い。また、噴火警報は出ますが、確実な場所が山梨側か静岡側か、噴火が起きてみないとわからないというのが実情です。
噴火警戒レベル5段階のうち、富士山は火口が山頂と山腹に数多くあって火口位置を特定できないためレベル2(火口周辺規制)がなく、代わりに異変のある場合に臨時の解説情報が出ます。噴火警戒レベルごとにエリア別の避難開始時期が設定され、火砕流のハザードマップの影響範囲は山中で市街への影響は限定的ですが、どこに火口ができるかわからないのが富士山の特徴であり、難しさです」