日本代表が躍動し、冬季五輪として歴代最多のメダルを獲得した北京五輪が閉幕した。フィギュアスケートの女子シングルでは、ロシア・オリンピック委員会の表彰台独占という前評判に割って入り、坂本花織(21才)が銅メダルを獲得した。坂本は、3姉妹の末っ子として、兵庫県神戸市に生まれた。フィギュアスケートに出合ったのは4才の頃だ。
「近隣にスケートリンクがなく、わざわざ大阪まで通っていました。送迎は専業主婦だったお母さんの役目。早朝や深夜になることもあったようで、大変そうでしたね。お母さんはとても熱心でしたが、スケーターとしてどんどん成長していく花織ちゃんを、いつもそっと見守っているような、控え目なかたでした」(坂本家の知人)
フィギュアスケートは何かとお金がかかる。年の離れた姉2人も社会人になって以降は資金援助をしていたというが、いちばんの支えは父・修一さんだった。修一さんは兵庫県警の元警察官で、地元警察署の副署長まで務めた人物だ。
「娘さんがフィギュア選手というのは警察署内でも有名な話でした。周囲に娘さんのことを聞かれると、“お金がかかるから大変よ〜”と冗談半分に笑っていました。クシャッと笑ったときの表情なんて父子でそっくりですよ」(元同僚)
勤務態度は真面目で誠実。当時の同僚は、修一さんのこんな言葉を耳にしたことがある。
「自分たちは毎日警察署に出勤しているけれど、一般の人が警察署に来ることはそうそうない。トラブルに巻き込まれることなんて、一生に1回あるかないか。その1回でイメージが左右されるんだから、警察官は規律を守って、人の模範にならないといけない」
どんなときでも笑顔で前向きな愛されキャラ。初対面の相手に対しても配慮を忘れない坂本の姿勢の理由には、父からの「一期一会」の教えがあるのかもしれない。そんな修一さんは、いまから2年ほど前に60才で退官した後、スポーツメンタルコーチへ華麗なる転身をしていた。
「あらゆる状況を想定して、突然の有事に対応しなければならない警察官には、メンタルの強さも求められる。転じて、『メンタルの保ち方』といったテーマの講演に元警察官が呼ばれることも多いんですよ。自分の経験を生かして、娘さんの力になりたいと思ったんじゃないですかね」(前出・元同僚)
昨年5月、修一さんは自身のSNSに愛娘について次のように綴っていた。
《彼女のハピネスジャーニーを見届けてください》
家族一丸で獲った銅メダルの価値は計り知れない。
※女性セブン2022年3月10日号