ライフ

老化細胞除去ワクチンの研究進む 従来薬より副作用少なく持続時間も長い

老化細胞除去ワクチンの研究を進める順天堂大学大学院医学研究科の南野徹教授

老化細胞除去ワクチンの研究を進める順天堂大学大学院医学研究科の南野徹教授

 医療の発達とともに日本人の平均寿命は年々延び続け、「人生100年」どころか「人生120年」が現実となりつつある。一方、健康寿命は依然男女ともに70代のまま。そのため、「死ぬ」ことよりも「老ける」ことへの不安が高まっている。老化を止めるすべはないのか――最新医学が驚くべき解答を呈示した。

「老化細胞除去ワクチンの開発に成功し、糖尿病や動脈硬化、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)に対する改善効果や早老症に対する寿命延長効果を確認できた」

 昨年12月に英科学誌「ネイチャー・エージング」のオンライン版に掲載された論文の成果に世界中から注目が集まっている。

 論文の執筆者は、順天堂大学大学院医学研究科の南野徹教授(循環器内科)が主導する研究グループ。南野教授が研究の背景をこう語る。

「これまで報告されている老化細胞除去薬は、抗がん剤として使用されているものが多く、正常な細胞にも影響を与えて副作用が起きる懸念がありました。そこで私たちは、『老化細胞』だけに作用し、副作用の少ない治療法の開発を目指して、20年以上にわたって研究を行なってきました」

 南野教授が言う「老化細胞」とは何か。近年になって「人が老いる」メカニズムが徐々に明らかになっているが、老化の主因とされているのが老化細胞である。

「人間の体の細胞は、少しずつさまざまなストレスにより、DNAに傷が入ります。傷が治れば普通の細胞に戻りますが、傷が入ったままだと、下手するとがん細胞になります。がんにならないために、細胞分裂を止めた細胞を『老化細胞』と呼びます。がん化を止める半面、老化細胞は炎症を起こす物質を出すので、他の正常な細胞を傷つけて老化細胞を増やしてしまうのです。老化細胞ができる理由としては肥満など生活習慣によるものが大きな影響を及ぼすと考えられています」(南野教授)

 つまり、がんの発症を防止した代償として、老化細胞が増えるのだ。

「本来、老化細胞は、免疫の力で常に取り除かれているはずなのですが、免疫の力が落ちてくると、たまるスピードが上回り、老化細胞の量が増えてしまう。だから、年を取るほど老化細胞はたまっていきます。

 結果、老化細胞がたまることで身体機能や臓器が衰え、がんや心不全、糖尿病、アルツハイマー、変形性膝関節症、肺線維症などの大きな病気を引き起こします」(同前)

関連キーワード

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン