【著者インタビュー】養老孟司さん/『ヒトの壁』/新潮新書/858円
【本の内容】
『バカの壁』『死の壁』『超バカの壁』『「自分」の壁』『遺言。』に続く、ベストセラーシリーズの最新作。≪人生を顧みて、時々思うことだが、私の人生は、はたして世間様のお役に立ったのだろうか≫。こんな自分自身への問いかけから始まる本書は、コロナのこと、東京五輪のこと、愛猫まるの死などを通して養老さんが考え抜いた人生の本質が綴られ、世間に振り回されない思考を身につけられること請け合いだ。
人と話して考える機会がなくなったのは残念
不要不急の外出を控えるように。
新型コロナウイルスの感染が広がって以来、政府や都道府県知事からくりかえしメッセージが発せられ、自分の仕事は、自分という人間は、はたして社会から必要とされているだろうかと、ハタと考えこんだり不安になったりした人は少なからずいるはずだ。
感染が広がり始めて4カ月ほどたった2020年5月に、養老先生が朝日新聞に書いた、「人生は本来、不要不急」という文章は、大きな反響を呼んだ。
『ヒトの壁』は、「不要不急」問題をさらに掘り下げ、コロナとワクチン、コロナ禍に開催されたオリンピックや、亡くなった愛猫のまるにも触れながら、生物としての「ヒト」とは何かについて思索を深めていく。450万部を超す大ベストセラーになった『バカの壁』に続く「壁」シリーズの最新作だ。
コロナ禍で明らかになったのは、次々に変異し、形を変えるウイルスのままならなさだ。ワクチンを打ったところで、時間がたつと効力は失われ、変異をくりかえすウイルスに対応できなくなる。結局のところ、天変地異と同じように、ヒトにはどうすることもできず、このまま翻弄されながら収束を待つしかないのだろうか。
「物事を予測して、コントロールしようとするのが現代人の一番悪い癖。いつもそう言っているんです。神様目線で個人の行動を制限すれば、ある程度コントロールできるかもしれないけど、大局的に意味がないし、ヒトだって極端に制限はされたくもない。考えれば答えが出ると思っているところが間違っていて、答えなんてないんです。
政治家も何かやってるふりをしなきゃいけないからしかたなくやってるけど、確信があってやっているわけではないと思います」
ちなみに、今年85歳になる養老先生は、医学部を卒業した解剖学者だが、もともと病院にはほとんど行かないそうだ。
「病院に行って定義されない限りは健康ですから」