現在放送中のドラマ『となりのチカラ』(テレビ朝日系)での松嶋菜々子(48才)の演技が話題になっている。
「あらアナタ、水難の相が出てるわよ! 一体、何のお仕事していらっしゃるの?」
同じマンションに引っ越して来た男性にぐいぐい迫る、チリチリのソバージュで奇抜なファッションに身を包んだアラ還おばさんの姿に、多くの視聴者たちは度肝を抜かれた。なぜならその正体が、「きれいなおねえさんは、好きですか」のCMで一世を風靡し、『やまとなでしこ』(フジテレビ系)などあまたのドラマで主演を張ってきた松嶋だったからだ。
かつて「うるさい」「おせっかい」と陰口を叩かれることも多かった“おばさん”だが、今やそういったイメージも変化。うるさくておせっかいな彼女たちと入れ替わるようにして現れたのが、阿佐ヶ谷姉妹に代表される、朗らかで爽やかな新しいおばさんだ。
「穏やかでユーモラスな、芸風はもちろん、注目を集める大きな理由は阿佐ヶ谷姉妹のライフスタイルにあると思います」そう指摘するのは文筆家の岡田育さん。岡田さんは古今東西のおばさんを研究し、その定義を再構築したエッセイ『我は、おばさん』として著した。阿佐ヶ谷姉妹の2人に血縁関係はないが、かつては6畳一間に同居、いまは同じアパートの隣同士に住み、部屋を行き来する仲だ。
「ひと昔前なら『いくら芸人とはいえ、女2人が結婚もせず身を寄せ合って暮らすなんて、ああはなりたくないよね』と言われたはずです。だけど令和の世の中は、その価値観が逆転している。結婚しても離婚するかもしれないし、子供を産んで育てられるかどうかも不安。自分の老後もまったくイメージできないと話す10代や20代の若者は非常に多いです。
だから阿佐ヶ谷姉妹のように、心を許し合えるような同性の友達とおかずを分け合って暮らせればそれが幸せなのではないかと考える。彼女たちに憧れるのは若い世代だけではありません。
“おひとりさまの老後”を覚悟する60代や70代の既婚女性たちも『夫に先立たれたら阿佐ヶ谷姉妹みたいにして、女友達と一緒に暮らしたいわ』と口にする。結婚して家庭を持ち、猛烈に働く夫を支えるといった旧来型の幸福とは別の形の幸せを提示してくれたからこそ、彼女たちに人気が集まっているのだと思います」(岡田さん)
同じくアラフィフのお笑い芸人で、現在はカナダに留学中の光浦靖子(50才)も多くの女性の支持を集めている。
「光浦さんは男性中心の日本のお笑い業界で、会社勤めでいえば管理職まで出世したような女性。そのうえで貯金から勉強、手続きまで準備を完璧にし、40代後半で海外へ羽ばたいた。いまの仕事でつらい思いをしながらも、いずれは自由に第二の人生を歩みたいと考える若い人からは、光浦さんの選択に勇気をもらったという話をよく聞きます」(岡田さん)
“おばさん”に学ぶべきものは多い。
※女性セブン2022年3月10日号