ロシアのウクライナ侵攻は、あらゆるスポーツ界にまで影響を及ぼしている。
国際柔道連盟は、ロシアのプーチン大統領の名誉会長職を停止。3月のサッカーW杯カタール大会の欧州予選プレーオフを控えるポーランド代表は、ロシア代表との対戦を拒否。FIFA(国際サッカー連盟)とUEFA(欧州サッカー連盟)もロシア代表チームとクラブチームの出場停止を決定した。スキー、ホッケー、バスケットボール、テニス、水泳……各競技が規制に踏み出している。
そんな中、2月の北京五輪で話題をさらったフィギュアスケートも窮地に追い込まれた。国際スケート連盟(ISU)は、3月23日からフランスで開催される世界選手権への、ロシアとベラルーシの選手の参加を認めない決定を下した。
「これは、再起を図るカミラ・ワリエワ(15才)にとっては大ダメージです。ひょっとしたらこのまま引退してしまうかもしれません」
あるスポーツ紙記者は、そう語る。北京五輪では、ロシアの団体戦金メダルに貢献も、直後には昨年12月のドーピング検査で陽性だったことが判明。世界中からバッシングを浴びる中、女子シングルに出場。初日のショートプログラムで1位も、フリーでは転倒連続の散々の演技で、金どころかメダルも逃す4位に終わっていた。
「演技直後には、コーチのエテリ・トゥトベリーゼ氏から強く問い詰められるパワハラシーンまで全世界に生中継されて、ドーピング疑惑に加えて師匠との確執騒動で、一時はメンタルがボロボロになったそうです。それでも実力は頭1つ抜け出ている。普通にやれば世界一だと、気持ちを奮い立たせて即練習を再開して世界選手権を目指していたので、お先真っ暗になってしまった」(スポーツ紙記者)
それでなくても、ロシアは1年ごとにトップ選手が入れ替わるほどに世代交代が激しい。
4年前の平昌五輪で金と銀を取ったアリーナ・ザギトワとエフゲニア・メドベージェワも、平昌後に早々に第一線から退いていた。3月2日には、金メダリストになったアンナ・シェルバコワ(17才)が、コーチに転身という事実上の引退を電撃表明。ワリエアと銀メダリストのアレクサンドラ・トルソワ(17才)にも、明るい未来は見えてはこない。
「そんな内情に加えて、ウクライナ侵攻が長期化して今後の国際大会から締め出され続けるとなると、モチベーションはもたなくなる。ワリエワ、シェルバコワ、トルソワという最強トリオは4年後も安泰とみられていたが、そんなロシアフィギュア界の黄金時代は、プーチン大統領によって強制終了させられてしまった」