ライフ

市場規模が拡大する代替肉 “肉よりヘルシー”な新たな食文化の落とし穴

環境にも身体にも良いはずの代替肉に語られざるデメリットが(GettyImages)

環境にも体にも良いはずの代替肉に語られざるデメリットが(GettyImages)

 市場規模が拡大し、バリエーション豊富な商品が次々に開発されている「代替肉」食品は、「肉よりヘルシー」と人気が上昇中だ。しかし、新たな食文化の裏側には、必ず落とし穴がある。“第4の肉”とも呼ばれる代替肉を食卓でどのように扱うべきか参考にしてほしい。

「大豆ミート」と書かれた食品をスーパーやレストランなどで目にする機会が増えた。モスバーガーやドトールコーヒーでは大豆由来のパティを使ったハンバーガーが販売され、コンビニでも大豆ミートのパスタや総菜が並ぶ。多くの飲食チェーン店で続々と大豆ミート商品が開発されており、もはや珍しいものではなくなりつつある。

 日本能率協会総合研究所の調査によると、2019年に15億円だった大豆ミートの国内市場規模は右肩上がりで、2025年度には40億円に達する見通しだという。

 牛や豚、鶏など家畜の肉を使わず作った肉のことを「代替肉(フェイクミート)」と呼ぶ。動物の細胞を培養して作る「培養肉」も代替肉の一種だが、まだ試験段階であり市場販売には至っておらず、現在は植物由来の食品を使って肉を作る「プラントベース・ミート」が主流だ。

世界で代替肉商品の開発が進む。米ケンタッキー・フライド・チキンでも(共同通信社)

世界で代替肉商品の開発が進む。米ケンタッキー・フライド・チキンでも(共同通信社)

 アメリカでは、マクドナルド、ケンタッキー・フライド・チキン、スターバックス、バーガーキングなどの大手チェーン店が代替肉ブームを牽引し、イギリスの銀行が2019年に出した試算では、10年以内に世界で販売される肉の約10%が代替肉になると予想される。

 なぜこれほど、世界で代替肉が広まっているのか。農林水産省によると、世界の人口増加による家畜肉不足への懸念、自然環境への配慮や動物愛護、欧米人の健康志向の高まり、さらに食品技術の向上による代替肉の味の改良などがある。実際に代替肉を食べてみると、食肉との違いに気づかないほど再現度が高い商品も多い。

 日本では昨年6月、政府が脱炭素社会実現のために代替肉を「食の一つの選択肢」として初めて取り上げ、本格的に注目を集めるようになった。代替肉を取り入れることが、どうして脱炭素社会の実現につながるのか。食品問題評論家の垣田達哉さんが解説する。

「4つの胃がある牛は、ゲップによって温暖化ガスのメタンを放出します。当然、家畜の飼料の生産や輸送でも二酸化炭素が排出される。そのため、牛肉の代わりに代替肉を食べれば、牛の飼育頭数が減ってメタンの排出量も減少すると考えられているのです」

牛のゲップには二酸化炭素の25倍もの温室効果がある「メタン」が多く含まれる(共同通信社)

牛のゲップには二酸化炭素の25倍もの温室効果がある「メタン」が多く含まれる(共同通信社)

 だが垣田さんは、必ずしも代替肉が脱炭素につながるとは言い切れないと疑問を投げかける。

「現在、大豆の生産量が世界1位のブラジルでは、森林を伐採して大豆の生産が行われています。大豆ブームが始まっている東南アジアでも、今後、森林伐採が行われる恐れがある。これでは本末転倒です。また、大豆の生産量が少ない日本は、輸入大豆に頼らざるを得ない。船で大量の大豆を運搬すれば、当然、二酸化炭素も排出されます」(垣田さん)

 代替肉にすれば単純に解決するとは言い難い問題だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン