世界が怒り、理解しあぐねている。ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチン大統領をどう捉えればいいのか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。
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今の世界的混乱を前にして「プーチン」という人格がいかに形作られたか注目が集まっています。しばしば指摘されるのが、旧ソ連の情報機関KGB(国家保安委員会/91年に解体)にいたという経歴。過去のスパイ経験が今回の判断に影響を落としているのではないか、とも指摘されています。
スパイと言えば映画やドラマの中で繰り返し描かれてきたテーマ。007シリーズからミッション:インポッシブルまで、古今東西を通じて有名な作品は多い。MI5やMI6、CIAやFBIといった組織も映画やドラマに頻繁に登場する。しかし、ソ連の諜報機関KGBについてはどうでしょう。
いかなる組織か、どんな活動をしていたのか、そしてどんなメンタリティの人々を作り出してきたのか。全体像はベールに包まれリアルな詳細を描き出す作品も多くはなく、映画でいえば2018年公開の『レッド・スパロー』などが話題になりました。
1975年にKGBに入省したプーチン氏。80年代初めに対外スパイ部門に移り、KGBの一員として東ドイツに駐在。その時東西ドイツを分断するベルリンの壁が崩壊し、東ドイツが瓦解していくのを目の当たりにして何もできなかったことがトラウマになっていると言われています。
プーチン氏は大統領に就任するとKGB時代の同僚を政権に呼び寄せクレムリンを固めました。今の側近のうち3人-パトルシェフ安保会議書記、ナルイシキン対外情報局長官、ボルトニコフ連邦保安局長官はみなKGBの同僚です。
謎めいた組織であり今のロシア政治に大きな影を落とすKGB。それを一般人の生活風景、しかも夫婦という視点から活写した興味深いドラマがあります。『ジ・アメリカンズ』(2013-2018年)はゴールデン・グローブ賞(作品賞)、エミー賞(主演男優賞・脚本賞)の栄冠に輝いた作品で、元CIA職員のジョー・ワイズバーグが企画・製作指揮、アメリカに潜入した実在のロシアスパイ夫婦の事件を下敷きに制作されただけに描写も生々しい。