これまで日本領土の島々を撮り続けてきた報道写真家の山本皓一氏が昨年12月、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)で16年ぶりに実施された海域調査に同行。さらに、昨年11月に南西諸島で行われた防衛訓練も取材した。国境最前線の今を伝える。
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日本最南端の島、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)は東京都心から1740キロ離れた絶海の孤島である。島は無人島で定期航路もなく、一般人が行くことはできないが、島の水没を防ぎ、日本の経済活動拠点であることを示すため、2011年より新たな港湾施設の建設が始まっている。
2021年12月、東京都は東海大学と連携し沖ノ鳥島周辺海域の調査を16年ぶりに実施し、私も同行した。調査船は静岡県・清水港から3日間かけて現地に到着。荒天のため島への上陸はできなかったが、ドローンによる撮影や、海底地形の解析など、最新技術を駆使した情報収集が行なわれた。
満潮時に海面からわずかにのぞくほどの「島」だが、この小さな島のおかげで、日本は国土の総面積を上回る、約40万平方キロメートルの排他的経済水域を確保している。海洋王国・日本にとって極めて重要な島であることは間違いない。
緊迫する南西諸島防衛の最前線
南西諸島の防衛を担う「水機団」(陸上自衛隊水陸機動団)の水陸両用作戦が昨年11月、鹿児島県種子島で公開された。
輸送艦「くにさき」から飛び出した水陸両用車(AAV7)が海中を進行する。「占領された島の奪還」を想定しているため浜辺には上陸を阻止する鉄骨の工作物が設置された。
荒波のなかCRRC(クリック=特殊複合ボート)と呼ばれる高速艇を操縦する水機団隊員たち。最も小回りの利く隠密性の高いボートで上陸ポイントを探る。
水機団の隊員らが、輸送艦「くにさき」に搭載している海上自衛隊の揚陸艇LCAC(エアクッション艇)に120ミリ迫撃砲RTを積み込む。
水機団は2018年3月に2個連隊で発足。「他国に占領された離島の奪還」を想定した訓練は、いやがおうでも尖閣諸島問題を連想させるが、取材には新華社通信など中国系メディアも“参戦”し、海外からの関心の高さを裏付ける格好となった。
【プロフィール】
山本皓一(やまもと・こういち)/1943年、香川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。「日本の国境」をテーマに撮影・取材を始め、「国境の島々」をテーマに、北方領土、尖閣諸島、竹島、沖ノ鳥島、南鳥島など全島の上陸取材に成功。2004年、講談社出版文化賞写真賞受賞。『日本人が行けない「日本領土」』『日本の国境を直視する1尖閣諸島』など著書多数。
撮影/山本皓一
※週刊ポスト2022年3月11日号