今年、20回目の節目を迎えるピン芸人日本一決定戦『R-1グランプリ2022』(カンテレ・フジテレビ系)。昨年は番組の構成などについて視聴者から批判もあり、今回はリニューアルにより巻き返しをはかっている。テレビ解説者の木村隆志さんは「R-1にとって今年が正念場」と指摘するが、その理由とは? 木村さんが解説する。
* * *
3月6日夜、ピン芸人日本一決定戦『R-1グランプリ2022』が放送されます。
3199人がエントリーした今大会の決勝進出者は、kento fukayaさん(吉本興業)、サツマカワRPGさん(ケイダッシュステージ)、金の国 渡部おにぎりさん(ワタナベエンターテインメント)、ZAZYさん(吉本興業)、吉住さん(プロダクション人力舎)、お見送り芸人しんいちさん(グレープカンパニー)、寺田寛明さん(マセキ芸能社)の7人。さらに、前日に行われる復活ステージの勝者を併せた8人で日本一の座を争います。
昨年は出場資格を「プロは芸歴10年以内、アマチュアは出場10回以内」に変えたほか、審査方法も3ブロックに分けた勝ち抜き形式から、『M-1グランプリ』(朝日放送・テレビ朝日系)とほぼ同じ全員で点数を競い、上位3組でファイナルステージを戦う形式に変更。大会名も「ぐらんぷり」を「グランプリ」に変え、MCに霜降り明星と広瀬アリスさんが就任するなど、大幅なリニューアルが見られました。
しかし、得点発表の方法にバラつきがあったほか、審査員のコメントが大幅にカット。レポーター役のおいでやす小田さんの出番も削られた一方で、ツイッター投票の集計結果を待つ無駄な時間が繰り返されるなど、構成のまずさが目立ちました。最後も各審査員の点数表示やコメントすらなく終了したほか、優勝したゆりやんレトリィバアさんの1本目ネタをなぜか再放送したため、ネット上に「放送事故」という言葉が飛び交うほど批判を集めてしまったのです。
世帯視聴率6.6%と過去最低で、個人視聴率も4.1%に留まるなど、何かとうまくいかず、関係者にとっては悔しい結果になりました。
『M-1』のいいところを貪欲に
そんな苦い経験を生かすべく、『R-1グランプリ』は今年もリニューアルを敢行。審査員の数を過去最少タイの5人に厳選した上でバカリズムさんと小籔千豊さんを加え、わかりづらさとタイムロスが指摘されたツイッター投票を廃止。これによって昨年の705点満点(審査員7人×100点とツイッター投票最大5点)という中途半端な数字から、500点満点のスッキリとした形に変わりました。
さらに決勝進出者の数を昨年の10人から8人に、ファイナルステージ進出者の数を3人から2人に厳選。それ以前の9年間は12人だったことから、「進行上の反省を生かすとともに、より質の高さを求める形に変えよう」という狙いがうかがえます。いずれにしても、「昨年の汚名返上したい」という思いによるものではないでしょうか。
そして今年の『R-1グランプリ』が正念場を迎えるもう1つの理由は、他のお笑い賞レースが視聴者の支持を集め、盛り上がっていること。
特に『R-1グランプリ』を手がけるカンテレと同じ在阪の朝日放送が制作する『M-1グランプリ』は、ネタの質だけでなく、進行や審査方法など、さまざまな点で称賛を受けています。そこで注目したいのは、『R-1グランプリ』が決勝だけでなく、復活ステージの審査方法も『M-1グランプリ』に近い視聴者投票に変更したこと。公式YouTubeで生配信することも含め、ライバル局の賞レースながら「『M-1グランプリ』のいいところは踏襲しようという姿勢が見られるのです。
振り返ると昨年10月に放送された『キングオブコント2021』(TBS系)も、応募資格を改定し、即席ユニット出場を解禁するなど大幅なリニューアルを敢行。さらに松本人志さん以外の審査員を一新し、4人全員が歴代王者だったことなどが視聴者に支持され、近年にないほどの盛り上がりを見せました。
もともと『R-1グランプリ』と『キングオブコント』は、「『M-1グランプリ』に次ぐ賞レースの座を争うライバルのような関係性」と言われています。『R-1グランプリ2022』は、『キングオブコント2021』の成功に刺激を受け、審査員の変更など、視聴者に支持された点を採り入れようとしているのかもしれません。