ライフ

【新刊】林真理子が描く、当事者のみ実名の稀有な恋物語『奇跡』など4冊

book

世界的写真家と梨園の妻が秘めた恋。当事者のみ実名で記す希有な男女の物語

 だんだんと暖かい日が増えてきたこの時期。ゆっくりと読みたいおすすめの新刊4冊を紹介する。

『奇跡』/林真理子/講談社/1760円

 写真家とは田原桂一氏(1951〜2017年)。お相手は梨園の妻だった博子氏。2人が出会ったときパリ在住の田原氏52才、博子氏33才。幼子連れで逢瀬を重ねる切ない恋で、田原氏が日本に本拠地を移してからは婚家と田原邸を往復する二重生活に。林真理子氏が語り部になったほぼノンフィクションの恋物語で、肉体的にも精神的にも“この人しかいない”という無二の関係に圧倒される。

book

出版社が付けてくれた師匠がイケメンとは。それって、ズルくないですか?

『老後とピアノ』/稲垣えみ子/ポプラ社/1650円

 分かるな〜、またピアノが弾けるようになりたい気持ち。早期退職後53才にして40年ぶりにピアノを再開した著者。指は動かず脳はフリーズ、楽譜も老眼で見えない。が、徐々にカンを取り戻し、発表会にも出る。40年前と今とは何が違うのか。履修と修得の違いかもしれない。前者は義務教育みたいな努力、後者は自分で見つける音の喜び。挑んだ曲の一覧に著者の個性がほの見える。

book

人間の生殖器は下、植物のそれは上。「植物は逆立ちした人間である」(アリストテレス)

『怖くて眠れなくなる植物学』/稲垣栄洋/PHP文庫/814円

 正体不明の植物が繁茂する森に取り残されたら確かに怖い。一瞬で獲物を呑む肉食のハエトリソウ、上から下に伸ばした根で他の木を簀巻きにする絞殺魔ガジュマル、巨大「ひっつき虫」は、傷の化膿で百獣の王も衰弱死させる。利益開発で砂漠化しつつある地球を地中の微生物の目で、「植物登場以前の原始の地球環境を取り戻しつつある」と書く強烈な皮肉がとどめのホラーに。

book

14才で作家デビューした10代作家。加山雄三や勝新など例が昭和なのに笑う

『落花流水』/鈴木るりか/小学館/1540円

 今回の主人公は高3の水咲。隣の立派な落合家は代々教師の家で、6才上のお兄ちゃんは水咲も通う母校で生物学の先生をしている。水咲は落合家の嫁にふさわしいよう自分も教師になろうと決意しているが、ある朝お兄ちゃんは下着泥棒で連行されてしまい……。恋する人がエロ犯!? どんでん返し、ありますよねと祈りながら読みました。鈴木さん、お願い、ぜひ続編を書いて!

文/温水ゆかり

※女性セブン2022年3月17日号

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
主演女優として再ブレイクしている安達祐実
《『家なき子』から30年》安達祐実が“子役の壁”を乗り越え、「2度目の主演ブレイク期」へ 飛躍する43才女優の今を解説 
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン