北朝鮮の朝鮮人民軍兵士らはこれまで冬季軍事訓練とともに、2月16日の金正日総書記の生誕80周年記念の祝賀行事などを終えたばかりで、心身とも極度に疲労しているという。しかし3月に入ってからも、4月15日の金日成主席の生誕110周年記念日の準備に追われており、「我々が必要なのはしっかりとした食事と休養だ」との不満の声が軍内で強まっていることが明らかになった。
首都平壌では軍や党幹部の居住区のマンションの壁に「金正恩、お前のせいで国民が餓死している」などと書かれた落書きが見つかっており、軍指導部内では一部軍将兵らの暴発に警戒が高まっているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
金正恩氏の祖父である金日成主席(1912-1994)の誕生日は「太陽節」として知られ、連休となっている。正恩氏の父の金正日総書記(1942-2011)は2月16日生まれで「光明星節」の記念日となっており、両者の誕生日にはいずれも大型の慶祝行事が行われるのが恒例だ。
今年1月には「光明星節」には正恩氏や金日成主席、金正日朝鮮労働党総書記の活動を振り返る写真展が開幕したほか、各地で市民が参加しての慶祝行事が行われた。
平壌の情報筋によると、今年110回目の「太陽節」ではとくに朝鮮人民軍主体の行事が多数計画されており、各部隊で講演会、発表会、出版物の展示、ドキュメンタリー映画の学習会などが行われ、「先人の偉大さと不滅の業績を認識することを目的としている」という。
各部隊の事情によって時期は多少異なるが、2月末から「太陽節」まで『金日成将軍の偉大な姿』、『偉大な歩み』、『先軍革命の逸話』などの各種偶像化図書が各部隊に配布され、連日学習会などが開催されている。
しかし、同筋は「兵士たちはこの新しい思想教育計画に不満を募らせている。兵士たちは年明けから休みなしの訓練で疲れているなか、光明星節のさまざまな行事に参加しなければならなかった。さらに、これから太陽節の慶祝行事の準備をしなければならない」と指摘した。
そのうえで、同筋は「このため、彼らは『いま、自分たちが切実に必要としているのは、革命史の新しいカタログでも、先代指導者の偉大さについての教育でもない。栄養たっぷりの食事と長い休息がほしい』と訴えている」としている。