NHK連続テレビ小説の主題歌は視聴者が毎朝耳にする“国民歌”。その選考過程で、莫大なカネがやりとりされている実態をアーティストやドラマの出演者、そして視聴者は知らない。朝ドラが利権ビジネスの舞台と化した異様な事態をNHKはなぜ放置しているのか。渦中のプロデューサーは本誌・女性セブンの直撃に「何が悪いんですか」と開き直った──。
4月8日の最終回に向けて盛り上がりを見せるNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(以下、『カムカム』)。親子3代にわたる家族の物語は、最高視聴率18.6%を叩きだした。
毎回のドラマに彩りを添えるのが、AI(40才)の歌う主題歌『アルデバラン』だ。森山直太朗(45才)が作詞・作曲を手がけた荘厳なバラードは多くの視聴者の感動を呼び、YouTubeの動画再生回数は600万回を超す。だが、いまこの主題歌をめぐってNHK内部で重大な疑惑が持ち上がっている。
朝ドラの主題歌に起用されることは、アーティストやレコード会社にとって大きな意味を持つ。NHKの公式ホームページには、山下達郎(69才)のこんな言葉が紹介されている。
《朝ドラの主題歌は非常にスペシャル。月~土の毎日、衛星放送を含めたら1日3回プラス土曜日の総集編まで半年間、毎日流れるわけですから》
固定ファンが多く、高視聴率が望める朝ドラの主題歌は、セールス面ではヒット確実。年末の『NHK紅白歌合戦』出場の切符もほぼ手中に収める。関連番組への出演も多く、現にAIはNHK英語講座『ラジオで!カムカムエヴリバディ』に半年近くレギュラー出演した。CDが売れず不況にあえぐレコード会社に、朝ドラの恩恵は計り知れない。過去には多くのスペシャルなヒット曲が生まれた。
「いきものがかりの『ありがとう』は『ゲゲゲの女房』(2010年)のテーマである“愛する人とゆっくり歩いていく幸せ”を丁寧に歌い上げて20万枚超え。春の甲子園の開会式入場曲になり、紅白にも出場しました。ほかにも『とと姉ちゃん』(2016年)の宇多田ヒカル『花束を君に』や、『花子とアン』(2014年)の絢香『にじいろ』など、ドラマが終わっても後世に歌い継がれる名曲揃いです」(音楽ライター)
放送中の『カムカム』のチーフプロデューサーによれば、今回の主題歌は「宇宙の果てからやってきて、海の底まで届く日の光のような、あたたかで明るい声」をイメージしたものだという。そもそも「アルデバラン」とは、おうし座の一等星のことだ。“多くの人への輝きと道しるべになるように”との願いが込められた、温かい楽曲である。だが昨年9月、この曲が主題歌に決定したことが報じられると、音楽業界からはこんな非難の声が上がった。
「また、あのレコード会社なのか」
通常、朝ドラの主題歌は放送の1年以上前にドラマのタイトルやテーマが決まり、その方向性に合わせてNHKがアーティストを選定し、オリジナル曲の制作をレコード会社に依頼するとされる。しかし、近年はその流れのなかに外部のコーディネーターが介入し、レコード会社やアーティストの選定に“口を出す”ことがNHK内部でも問題視されていた。
「特にこの数年は、主題歌を手がけるレコード会社に不自然な偏りがあり、一部のレコード会社との露骨な“癒着”が疑われていました。民放ならいざ知らず、受信料で運営される公共放送の事業者が、特定の企業やアーティストを優遇することはあってはなりません」(NHK関係者)
確かに『カムカム』から過去7作のうち、5作の主題歌が大手レコード会社「ユニバーサルミュージック(以下ユニバーサル)」が制作した曲だった。