韓国大統領選の結果、保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦氏が次期大統領に選ばれた。対抗馬だった与党「共に民主党」の李在明氏は過去に過激な反日発言を繰り返してきたのに対して、尹氏は対日融和派とされ、「今後の日韓関係は改善に向かっていくのではないか」(日本の外務省関係者)と期待の声が高まっている。
しかし、韓国国内に目を向けると、尹政権の誕生は国家を「分断」に導く危険性を孕んでいる。「女性ぎらい」の進むイデナム=20代男性と、その標的とされたイデニョ=20代女性の対立が深刻化しているのだ。
尹氏は大統領選の公約として、「女性家族省の廃止」を掲げた。女性人材の活用支援などを担ってきた女性家族省は、公務員の女性比率を高める目標値を掲げるなどの政策を進めてきたが、就職難に苦しむイデナムが「逆差別だ」との不満を募らせていた。尹氏の公約は、社会に不満の溜まっていたイデナムたちの心を掴み、支持率は急上昇した。韓国人ジャーナリストが解説する。
「近年、イデナムの集団的な政治行動は社会を動かす大きなパワーとなりつつあります。これに味をしめた尹氏は、兵役に就いている間の給料として月200万ウォンを保障するという公約も発表、さらにイデナムたちの歓心を誘いました。
対立候補の李氏はこの動きを『男女対立を煽る』と批判しましたが、実際にはその後、次々と兵役中の優遇措置などを発表し、尹氏に引きずられるようにイデナムに媚びざるを得なくなりました。
標的にされたイデニョたちも『男女平等に反する』と批判の声を上げたものの、イデナムのような集団的パワーがなく、彼女たちの声はおきざりにされてしまった印象です」
大統領選によって生まれた男女間の「分断」は、今後ますます広がっていく可能性があるという。