ライフ

開発者が語るがん「光免疫療法」 治療の簡便さと費用の安さが画期的

「光免疫療法」を開発した小林久隆博士

「光免疫療法」を開発した小林久隆博士(時事通信フォト)

 今はまだすべてのがんに適応しているわけではないが、5年後には……そんな期待を抱かせる革新的な治療法の研究が進んでいる──。がん治療法は長年にわたって手術、抗がん剤、放射線の「3大療法」が標準とされてきたが、新たな治療法の登場により、これまで3大療法では命が救えなかった症例に光が差している。

 2020年9月、ビッグニュースとなったのが世界初となる「光免疫療法」の日本での承認だ。毎日新聞医療プレミア編集長で『がん治療の現在』の著書がある永山悦子氏が、説明する。

「光免疫療法は、がん細胞にだけ結びつく抗体薬を患者に投与し、その後、光を当てて薬に化学変化を起こさせ、がん細胞をピンポイントで壊す画期的な治療法です。免疫療法に次ぐ、“第5のがん治療法”と呼ぶ人もいます」

 楽天グループ創業者・三木谷浩史氏が設立した「楽天メディカル」と、米国立衛生研究所・国立がん研究所(NIH/NCI)主任研究員の小林久隆博士が開発したその薬はアキャルックスと名付けられた。現在の適応は顔や首にできる頭頸部がんだが、全国約40の病院で治療が可能となり、昨年末までに約40回の治療が実施されたという。『親子で考える「がん」予習ノート』の著者で国際医療福祉大学病院教授の一石英一郎医師は、こう話す。

「この薬は効果が高く副作用が少ない上に、治療の『簡便さ』と、費用が『安価』で済むところが画期的です。地域や施設でバラつきがある日本のがん治療を『どこでも、どんな医師でも効果が望める』ものに変える可能性があります」

 放射線治療や重粒子線治療、中性子捕捉療法(BNCT)もがん細胞に狙いを定め光化学的に行なう治療法だが、用いる機器が数億~数百億円と高価で、実施できる施設は限られる。一方、小林博士の「光免疫療法」に用いるレーザー光発生装置は、1台約300万円程度と桁違いに安い。

 この「光免疫療法」を開発した米国の小林博士に話を聞くことができた。

 実用化され1年余りが経ち、医師や患者からの反響を聞くと「テレビ番組を観た印象では、概ねポジティブに考えていただいているよう」と控えめだが、光免疫療法には大きな自信を覗かせた。

「これまでのがん治療ではなかなか実現できなかった『がん細胞だけを選べる薬』を、『光を当てないと薬が機能せず、がん細胞を壊す方向に動かない』形で作りました。

 皆さんご存じの新型コロナ治療薬はウイルスにくっつく抗体で効きますが、今回は『がんにくっつくが正常な細胞にはつかない抗体』を使い、それに『IR700』というがん細胞を壊す仕組みを持つ物質を載せました。

『IRIS700』は細胞にくっついただけでは働かず、時間が経てば水に溶けて尿として排出されるような種類の物質です。がん細胞にくっついたと思われる辺りで、テレビのリモコンにも使われる人体に無害な『近赤外光』を当てると、5~6分でがん細胞は物理的にパンッと破裂し、壊れます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン
迷惑行為を行った、自称新入生のアビゲイル・ルッツ(Instagramより)
《注目を浴びて有料サイトに誘導》米ルイジアナ州立大スタジアムで起きた“半裸女”騒動…観客の「暴走」一部始終がSNSで拡散され物議に
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《異なる形の突起物を備えた光沢感あるグローブも…》10代少女らが被害に遭った「エプスタイン事件」公開された新たな写真が示唆する“加害の痕跡”
NEWSポストセブン
「みどりの『わ』交流のつどい」に出席された秋篠宮家の次女、佳子さま(2025年12月15日、撮影/JMPA)
佳子さま、“ヘビロテ”する6万9300円ワンピース 白いジャケットからリボンをのぞかせたフェミニンな装い
NEWSポストセブン
オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン