毎号、名刹を取り上げて仏像、伽藍、行事などをわかりやすく解説し、長さ80センチの大画面で貴重な「寺宝」をクローズアップ、寺宝をめぐる旅へと誘うウイークリーブック『隔週刊 古寺行こう』(小学館)が3月8日に創刊される(1号・法隆寺、2号・東寺。同時創刊)。ここでは同誌2号のテーマである、京都の東寺について紹介する。
新幹線で京都駅に近づくと、車窓に東寺の五重塔が現われる。高さ約55メートルの雄姿は京都の象徴のひとつであり、古の人々も仰ぎ見た塔の初層内部には、弘法大師空海の教えを今に伝える至宝とともに極彩色の密教空間が広がっている。
東寺真言宗総本山である東寺の歩みは、平安京の歴史とともに始まる。
東寺は、桓武天皇による平安京遷都の2年後、延暦15(796)年に鎮護国家を祈念する官寺として創建された。平安京の正門である羅城門の東側に位置することから東寺と呼ばれた。時を同じくして西側に西寺も創建されたが、後に衰退して消えた。東寺の寺域と伽藍配置は唯一現存する平安京の遺構であり、平成6(1994)年には世界遺産に登録されている。
平安京遷都から29年目の弘仁14(823)年、東寺は嵯峨天皇から空海に下賜され、真言密教の根本道場となる。造営を任された空海は、唐で学んだ密教の真髄を建物、空間、諸尊など様々な造形物に込めた。
拝領時には金堂以外の伽藍の造営は進んでおらず、空海はまず、密教の中心伽藍となる講堂を建立し、その後、五重塔の建造に着手した。金堂、講堂、食堂と一直線に並ぶ伽藍配置にも密教の教えを込めており、薬師如来を本尊とする金堂、密教の教えを学ぶ講堂、僧が生活の中で仏の教えを日々実践する食堂はそれぞれ、仏教で重んじられた「仏・法・僧」の「三宝」に呼応している。
密教では「奥義は言葉では伝えられない」とされ、教えは仏に満ちた宇宙を描く仏画「曼荼羅」で表現される。曼荼羅は基本的に平面図で描かれていたが、空海はさらに発展させ、密教の真意を3次元的に表現した。それが東寺を代表する至宝、「立体曼荼羅」だ。21体の仏像の配置は、密教の根本経典や鎮護国家の経典などを参考に空海が独自に考案し、当時の一流の仏師たちが手がけた。空海は、前出の伽藍配置で境内をも密教の教えを体験できる「曼荼羅」として表現したと言われる。
度重なる戦乱や災害により、境内には創建当初の建物は残っていない。だが、空海が唐から持ち帰った密教法具や真言七祖像をはじめ、現存する最古の色彩曼荼羅「両界曼荼羅図」など、幾多の戦火をかいくぐり、国宝に指定されている寺宝は25件・81点、重要文化財は58件・2万4125点に上る。1200年以上にわたる信仰と歴史を物語る数々の至宝は美術品としても高い質を誇り、東寺は密教美術の宝庫とされる。
■小学館ウイークリーブック『隔週刊 古寺行こう』(隔週火曜発売)
1号(法隆寺)・2号(東寺)同時創刊(3月8日)、特別価格490円(税込み)
※3号(3月29日発売)以降は各770円
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※週刊ポスト2022年3月18・25日号