約2万人の死者・行方不明者を出した東日本大震災から11年が経った。大地震はいつ起きてもおかしくない。家の中で被災したときのために、どんな対策ができるのだろうか──。危機管理アドバイザーの国崎信江さんは災害時に備え、廊下や、それ以外の部屋に、極力ものを置かないようにしているという。置いたとしても、次のようなことを心掛けている。
「わが家の場合、時計は紙製、写真立ては布製、花瓶はゴム製など、当たっても大事に至らない材質のものにしています。気に入って買ったものが、家族を脅かす凶器になったらいやですから、家の中のものは、すべて災害時のことを考えて選んでいます」(国崎さん・以下同)
また、夜中に被災したとき、火が出たときなどを想定し、こんな備えも。
「各部屋には、コンセントに差し込み、停電時は自動点灯する足元灯を設置し、いざというときに真っ暗にならないように工夫しています。揺れでストーブなどが倒れ、火が出たときに備え、火に投げ込めば消火できる、ペットボトル型の消火剤も家のあちこちに置いています。さらに、トイレや浴室など、閉じ込められやすい場所や玄関には、居場所を知らせて助けを呼ぶための笛、飲み水、簡易トイレ、ラジオ、ランタンなどの防災グッズを備え付けています」
災害時は何が起こるかわからない。備えは何重にもしておくとより安心だ。
夜、寝室で寝ている時に地震発生…
倒れる家具の下敷きにならないよう、床に伏せ、枕で頭を守って図のように身を丸めるのが原則だという。そのとき、大型家具がない側に移動すること。
「慌てて暗闇の中で動くと、つまずいてけがをする可能性も。私なら、床に伏せて揺れが収まるのを待ちます。寝るときははだしなので、わが家の寝室には、はだしで踏むと危険なガラス製品などは置かないようにしています」
浴室でシャンプー中に…
「湯船に入っているときは、慌てて出ようとすると転倒することもありますから、その場でふちにつかまります。洗い場で髪などを洗っていた場合は、そのままドアを開けて脱衣所へ。わが家ではバスローブを脱衣所に常備しているので、それを羽織り、泡のついた髪はタオルで拭い、身をかがめます。このとき、脱衣所にドアがあるなら閉じ込められないよう開けるか、ドアのすき間にタオルを差し込みます」
トイレを使用中に…
「トイレや浴室は、揺れでドア枠がゆがむと閉じ込められるリスクがあります。ですから、私なら即座にトイレのドアを開け、動けるようであれば廊下に出ます。タンクがあるトイレの場合は、タンクのフタが外れないよう、手で押さえて揺れが収まるのを待ちます」
トイレがいちばん安全という人もいるが、閉じ込められるリスクがある以上、「トイレ=安全な場所」ではないと覚えておこう。
家を離れるときは…
「避難所に行く必要がある場合、私ならまずブレーカーを落とします。地震で停電したからと、家電の電源を落とさずにいると、通電した際に発火することがあるからです。このほか、ガスや水道の元栓をしめます。家中の窓や扉の鍵をかけてシャッターを下ろすなど防犯対策もしてから出ます」。
玄関に、行き先を記した紙を貼る人も多いが、これは防犯上おすすめしないという。
離れた家族との連絡は…
被災時、もし家族が離れていたらどう連絡を取り合うか。「被災地にいる人同士の電話はつながりにくいのですが、被災していない他県へかける分には比較的つながりやすいんです。また、NTTの『災害用伝言ダイヤル』【*】を使うのもおすすめ。うちの場合、親戚を共通連絡先に決めておき、家族それぞれが親戚に電話をして居場所を伝えたり、伝言を聞いたりできるよう、あらかじめ打ち合わせしています」。
【*災害時、「171(イナイ)」に電話し、ガイダンスにしたがって被災地にいる家族など連絡を取りたい人の電話番号をダイヤルすると、30秒以内の伝言を残したり、伝言を確認することができる】
取材・文/桜田容子 イラスト/尾代ゆう子
※女性セブン2022年3月24日号