「キャンセルカルチャー」とは、特定の対象の言動などを取り上げ糾弾し、排除や排斥、追放やボイコットしようとするムーブメントのことだ。それは現在の行いだけでなく、過去に遡って問題にされ、不買運動をしたり辞任させたりなど、社会的制裁を積極的に求めるのがネット炎上と異なる。SNSによってこの動きは拡大している。キャンセルカルチャーはなぜどのような時に起きるのか。ネットやSNSの問題に詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。
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あるアーティストのファンだったという人は語る。
「過去にひどいいじめをしていた言い逃れようがない証拠が出てきて、すごく残念だった。大きな仕事から降ろされただけでなく、アルバムも白紙になってしまい、作品自体は何も変わらないのに、もう純粋に楽しめなくなった。ただ、テレビとかで連日糾弾されていて、気の毒にも感じた」
著名人による問題ある言動が取り沙汰されたが最後、それまでの活躍や能力などに関係なく徹底して叩かれ、社会的に葬り去られることが増えてきた。
キャンセルカルチャーとはこのように、主に著名人などの過去の犯罪や不祥事、不適切な発言などを掘り起こし、それを元に批判し、社会的地位を失わせるなどして排斥する現象のことだ。数年あるいは数十年前の言動でも対象となり、一度問題視されれば、謝罪するか社会的地位などを失うまで糾弾され続ける。
SNSやネットの過去の発言などが掘り起こされて起きることも多く、ソーシャルメディアが普及した2010年代後半から増えたと言われている。また、以前から見られた、大勢の前でミスや誤りなどを糾弾するさらし行為、「コールアウト・カルチャー」の一つとされる。
オリンピックで続いたキャンセルカルチャー
『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングさんは、2020年6月、複数回にわたりTwitterでトランスジェンダー差別だと受け取れる発信をしたとして、繰り返し批判を集めていた。SNS上の過去の言動から、トランスジェンダー排斥をする人物なのではないかという疑惑が浮上していたタイミングだったこともあって非難の声がおおきくなったのだが、謝罪しても責任を問う声は収まらなかった。これもキャンセルカルチャーの一つと言われている。