季節の変わり目のせいか、慢性的な頭痛が起きるし、なんだかやる気も出ない、ふと鏡に目をやると、太くてたるんだ自分の首が目に入ってさらに気が滅入る──これら不調のは、コロナ禍でさらに加速したスマホの使いすぎが原因かもしれない。
「街中のショーウインドーに映った自分の首が顔と肩の間に埋もれているように見えて愕然とした」「冬の間、ダイエットに励んでやせたはずなのに、首だけがずんぐりと太い」といった嘆きの声がいたるところから聞こえてくる。東京脳神経センター理事長で医師の松井孝嘉さんはこうした“首が太く短くなる症候群”の原因の多くは、スマートフォンにあると断言する。
「体重や体形に変化がないのにもかかわらず、首だけが太く短く、まるで埋もれたようになってしまう理由のほとんどはスマホの使いすぎにあります。画面のサイズが小さなスマホは、どんなふうに持っても目から30cm以上の距離を保つのは難しい。小さなスマホをのぞき込むようにして使っていれば、次第に頭が前に落ち、猫背になりやすく背中は丸まっていきます。私はこれをスマホ漬けで起こる『スマホ首病』と呼んでいます」
首への負担が生むのは外見の問題だけではない。体に異常を来すケースも少なくない。多くの人が悩む代表的な症状は、首から肩にかけての痛みだ。さらには自律神経の乱れが生じることもある。
そんな「スマホ首病」はどうしたら予防・改善できるのか。竹谷内医院院長で整形外科医の竹谷内康修さんは、「真っ先に取り組むべきなのは、首に負担をかけない姿勢をマスターすること」だと語る。
「無理をせず、持続可能ないい姿勢をキープすることが首を守ることにつながります。まずは背骨のS字カーブを保った状態が、正しい姿勢だと覚えてください。立つときは猫背にならず、背筋を伸ばすように意識します。理想は、横から見ると『耳、肩、腰、股関節、ひざ、外くるぶし』が一直線上にそろうイメージです。
左右の乳首の中間の背中側、肩甲骨の下あたりに『背中のボタン』があり、後ろから押されているとイメージするときれいな姿勢を作りやすいのです」(竹谷内さん・以下同)
いすに座るときも背骨の“S字カーブ”を意識しよう。気をつけるべきは、無理に背筋を伸ばそうとしないこと。
「背もたれを使わずに背筋をピンと伸ばして座っても長続きしません。そればかりかかえって体に負担がかかり、首の筋肉を緊張させることにもなりかねない。いすに深く腰かけてしっかりと背もたれに寄りかかり、力を抜いて楽な姿勢をキープしてください」