およそ4000万人の人口であるウクライナは、大きな勢力のぶつかり合うことが多い位置にあり、歴史を振り返ると何度も戦場になってきた。近年は水準が高い技術と人材が集まっていることから東欧のシリコンバレーと呼ばれていた。そのウクライナから東に約7500キロ、約5000万人の人口をもつ大韓民国も大きな勢力がぶつかり合うことが多い位置にあり、いまも法の上では戦時下のまま、2000年代から国家ぐるみで力を入れているIT大国ぶりで知られている。しかし現実をみると、ウクライナはいまも外国へ出稼ぎに行く人が少なくなく、韓国も若者ほど外国へ行きたがる。俳人で著作家の日野百草氏が、日本の会社で働く30代の韓国人男性がなぜウクライナ情勢に対する韓国の姿勢に落胆しているのか、大統領選の結果で政権交代が起きても期待できないのかを聞いた。
* * *
「本当に恥ずかしい。あいかわらずのコンデです」
新宿のレンタルスペース、韓国人ゲームディレクター(30代)との会話。イラスト発注の打ち合わせも早々、自然とロシアのウクライナ侵略の話となった。韓国語の「コンデ」とはスラングだが、日本の「老害」という言葉をもっと強くした感じだろうか。彼の日本語は流暢ではあるが英語やハングルも混じるため、本稿の一部は筆者が適時正している。
「遅れてロシア制裁は信用されません。いつもコンデが国を悪くします。若者を苦しめます」
彼は韓国の地方国立大学を卒業してしばらく、短期間に非正規や失業を繰り返した経験のある苦労人だ。韓国は「インソウル」という言葉があるくらい、基本的には国私立関係なく首都ソウルにある大学が偉い。一概には言えないが国立大学でもソウルにある大学以外は悪くはないが「ビミョー」というお国柄だ。日本の偏差値制度と基準が違うのもあるが、国公立上位とされる日本とは事情も違う。別の日本在住の韓国人曰く「日本だと、どこでも(韓国の)国立大を出ているだけで『頭いい』と言われるからお得」とのこと。
「ソウルとそれ以外です。あと地方の学生は差別されます。普段はされませんが、一流財閥に就職となると違います。生まれもそうです」
韓国という国はトップに近づくほど「ソウル市民とそれ以外」「名門の家系とそれ以外」という文化が根強くある。極端な話だが貧乏人でもソウルに住んでいるほうが偉いし、頭が悪くても血統が良ければ偉い。だからアカデミー賞4冠の大ヒット映画『パラサイト 半地下の家族』ではないが、上昇志向が強ければ意地でもソウルに住むし、相手が財閥の一族というだけで媚びへつらう。これも一概には言えない話だが、韓国社会に確かに存在する一面である。