国際情報

東京で働く韓国人の若者「大統領選に興味はない」その背景

3月9日に執行された韓国大統領選挙で当選した保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補(AFP=時事)

3月9日に執行された韓国大統領選挙で当選した保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補(AFP=時事)

 およそ4000万人の人口であるウクライナは、大きな勢力のぶつかり合うことが多い位置にあり、歴史を振り返ると何度も戦場になってきた。近年は水準が高い技術と人材が集まっていることから東欧のシリコンバレーと呼ばれていた。そのウクライナから東に約7500キロ、約5000万人の人口をもつ大韓民国も大きな勢力がぶつかり合うことが多い位置にあり、いまも法の上では戦時下のまま、2000年代から国家ぐるみで力を入れているIT大国ぶりで知られている。しかし現実をみると、ウクライナはいまも外国へ出稼ぎに行く人が少なくなく、韓国も若者ほど外国へ行きたがる。俳人で著作家の日野百草氏が、日本の会社で働く30代の韓国人男性がなぜウクライナ情勢に対する韓国の姿勢に落胆しているのか、大統領選の結果で政権交代が起きても期待できないのかを聞いた。

 * * *
「本当に恥ずかしい。あいかわらずのコンデです」

 新宿のレンタルスペース、韓国人ゲームディレクター(30代)との会話。イラスト発注の打ち合わせも早々、自然とロシアのウクライナ侵略の話となった。韓国語の「コンデ」とはスラングだが、日本の「老害」という言葉をもっと強くした感じだろうか。彼の日本語は流暢ではあるが英語やハングルも混じるため、本稿の一部は筆者が適時正している。

「遅れてロシア制裁は信用されません。いつもコンデが国を悪くします。若者を苦しめます」

 彼は韓国の地方国立大学を卒業してしばらく、短期間に非正規や失業を繰り返した経験のある苦労人だ。韓国は「インソウル」という言葉があるくらい、基本的には国私立関係なく首都ソウルにある大学が偉い。一概には言えないが国立大学でもソウルにある大学以外は悪くはないが「ビミョー」というお国柄だ。日本の偏差値制度と基準が違うのもあるが、国公立上位とされる日本とは事情も違う。別の日本在住の韓国人曰く「日本だと、どこでも(韓国の)国立大を出ているだけで『頭いい』と言われるからお得」とのこと。

「ソウルとそれ以外です。あと地方の学生は差別されます。普段はされませんが、一流財閥に就職となると違います。生まれもそうです」

 韓国という国はトップに近づくほど「ソウル市民とそれ以外」「名門の家系とそれ以外」という文化が根強くある。極端な話だが貧乏人でもソウルに住んでいるほうが偉いし、頭が悪くても血統が良ければ偉い。だからアカデミー賞4冠の大ヒット映画『パラサイト 半地下の家族』ではないが、上昇志向が強ければ意地でもソウルに住むし、相手が財閥の一族というだけで媚びへつらう。これも一概には言えない話だが、韓国社会に確かに存在する一面である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン