先月、日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)に、初めてAI(人工知能)を使って執筆された小説が入選し、話題を集めた。AIが進化し、我々の生活やビジネスに浸透しつつあるなかで、文章を書くために作られたAIも誕生している。その一つ、「AIのべりすと」を作成したのは、ゲームクリエイターのSta(すた)さん。小学生で不登校になるも9歳で200本のゲームを作成。「若き天才」「伝説的な不登校小学生」として雑誌に取り上げられたこともある(『新潮45』)。Staさんが理想とするのは「友達」のようなAIだという。「AIのべりすと」を使った文学賞の開催を機に、お話を聞いた。(前・後編でお届けします)
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あなたの文章は文豪調? ネットニュース風? 人間の無意識を見せるAI
「AIのべりすと」を起動する。人間が文章を数行書くと、AIが、続きの文章を数行書いてくれる。このAIには様々なオプションが用意されており、設定によって、AIの文章はがらりと変わる。たとえば「文章スタイル」には、なるべく文体をコピーする「ゴーストライター」、小説らしい装飾のある文を書く「オルタナv2」、話がそれにくい「スローペース」などの選択肢がある。これらは基本設定に過ぎないが、まず分かるのは、執筆は人間とAIの共同作業だということだ。
「『AIのべりすと』のAIは、人間とAIが二人三脚で書くものである、という建て付けになっています。短編であれば、AIだけで、ゼロから起承転結のある面白い作品が書けるようにできていますが、基本的には、直前に書かれた文章を参考にして文章を書いていくという使い方を想定しています。その人の文章が文豪調だと、AIもそういう方向に引っ張られますし、ツイッターに見られるような口調で書くと、ネットニュースっぽくなったりするんです」(Staさん、以下「」内同)
小説を書くAIというと、AIが自分勝手に書くようなイメージを抱く人がいるかもしれない。だが、実態はむしろ逆で、人間にかなり合わせてくれるのがAIだと、Staさんは言う。
「意識していなくても、年齢や職業といった属性や特性によって、人が使う言葉には違いがあります。10代の女性の文章と、50代の男性の文章はやっぱり違うわけで、AIはそういった人間の無意識が出るようなところがあります」
文庫本178万冊分に相当するコーパス(データベース)をAIに読み込ませ、訓練することで、この、“人間の鏡”のようなAIを実現した。コーパスにはGoogleが提供しているコーパスや、Common Crawlという団体が公開しているネット上の文章が含まれ、それらからスパムや過剰な広告を取り除くなどし、汎用性の高いものを目指した。