3月9日の韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が当選を果たした。“親日派”と言われる尹氏は5月10日の就任を前にさっそく岸田文雄首相と電話会談に臨むなど、冷えきった日韓関係にようやく陽が差すと期待されている。
しかし、これまで何度、韓国大統領の「反日転向」が繰り返されてきたか。不穏な空気は次期大統領・尹氏も纏っている。
金泳三も李明博も
3月9日に行なわれた韓国大統領選は両候補が選挙中に互いの妻のスキャンダルを追及し合うなど、異例の展開を見せた。漢陽女子大学(ソウル市)助教授の平井敏晴氏が語る。
「程度の低い罵り合いが続き、韓国国内では『みっともない』との嘆息が聞かれました。
かつての大統領選は支持政党別に票が割れていたため結果を予測しやすかったですが、今回は野党が候補を一本化したにもかかわらず、与党との得票差はわずか0.7ポイントの大接戦となりました」
デッドヒートを制したのは、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏だ。ソウル生まれの尹氏は、長く司法浪人を経験し、9回目の司法試験に合格して33歳で新人検事に。以降は検察一筋の人生を送り、2019年に検察トップである検事総長に上り詰めた。政治経験はないが、検察改革を進めた文在寅政権と対立したことで、「反・文政権」の象徴として「国民の力」に担ぎ上げられた。
反日・親北路線を突き進んだ文政権が終焉して5年ぶりとなる保守政権の誕生に、大手メディアでは対日融和政策への期待が高まっている。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授の李鐘元氏が語る。
「大統領選で尹氏は米韓関係の強化や日韓関係の改善といった保守的なスローガンを掲げました。日本との具体的な関係改善政策の内容はまだ見えませんが、1998年に金大中大統領と小渕恵三首相が日韓の友好協力関係の発展を目指して発表した『日韓パートナーシップ宣言』のような、新しいタイプの政治的合意を目指す可能性があります」
尹氏が大統領選の勝利後に「未来志向の韓日関係を作る」と語ったことも、日韓関係の改善が進むとの見方を後押ししている。