韓国の大統領選は3月9日、保守系野党の尹錫悦氏が当選した。選挙期間中、数万人ともいわれる中国在住の北朝鮮の人々は大統領選の報道に釘付けだったという。候補者同士が自由に現職の大統領や歴代大統領を批判でき、国民1人1人が自分の国を導くのに最適な人物を選ぶことができることに驚きを隠し切れない状況だったことが分かった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
今回の韓国の大統領選は尹氏と革新系与党の李在明氏の事実上の一騎打ちとなったが、立候補者は全部で14人が登録されていた。一方、北朝鮮でも政府のさまざまな役職の選挙が行われているが、選挙では事前に承認された1人の候補者のみになる。
これについて、北朝鮮の丹東市出身の貿易機関関係者は、韓国でこれほど多くの人々が大統領選に立候補しているのには正直、驚いたし、それぞれの大統領候補が公の場で演説して、自分の思うところを堂々と主張できることにも、うらやましさを通り越して、呆れてしまった、と語ったという。
また別の北朝鮮人はRFAに対して「14人もの人々が大統領選挙に立候補することは、わが国(北朝鮮)では全く考えられないし、ありえないことだ。わが国の最高指導者の選挙も韓国と同じように行うべきだ」などと述べて、北朝鮮の政治体制がいかに世襲独裁であるかを強調していた。
北朝鮮から中国遼寧省にある北朝鮮系貿易機関に派遣されていると北朝鮮の職員はこう語っている。
「わが国では最高指導者の選挙はなく、これまで3人の世襲統治者しかいなかった。最高人会議(国会に相当)を筆頭にしたあらゆる選挙でも、それぞれの住民は党幹部から、あらかじめ決められた候補者に投票するように命令されている。
韓国のように自由に候補者を選ぶことができる権利はないに等しい。これからは、民主的な投票プロセスによって指導者を選ぶことができるようになるといいのだが、それが現実となるときは、白頭ライン(金日成主席の子孫)の独裁体制が滅びる時だろう」
「白頭ライン」とは、「国祖」金日成主席の子孫を指す。中朝国境にある白頭山は、朝鮮半島最初の神話上の人物である檀君が生まれた場所として、朝鮮文化の中で神聖視されている山である。