反体制派やジャーナリストなど、自らの行く手を阻む者の命を次々と奪ってきたとされるロシアのプーチン大統領。冷酷な独裁者が報いを受ける日はくるのか。
アメリカはこれまで、世界の平和と秩序を乱すテロリストに対しては容赦なく刺客を放ってきた。アルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンは潜伏先をアメリカ軍の特殊部隊に急襲され射殺。イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディも米特殊部隊に追い込まれ、自爆死した。
核のボタンにすら手をかけようとするプーチン氏も暗殺の標的となる可能性はあるのか。国際政治アナリストの菅原出氏はこう解説する。
「アメリカなどの特殊部隊がロシアに侵入してプーチンの命を奪うのは、まず不可能です。バグダディの潜伏していたシリアなどはアメリカ軍が事実上の制空権を持っており、かなり自由にヘリを飛ばしたりして軍事活動ができたのですがロシアではそんなことはできない。軍が他国に入るのは主権侵害に当たるため、戦争行為と見なされる。そうなるとより大きな戦争に発展し、第三次世界大戦が始まってしまってもおかしくない」
では、ロシア国内の人間が暗殺に動く可能性は考えられないのか。軍事アナリストの小川和久氏はこう話す。
「クレムリン内に西側諸国と通じた人間が埋め込まれているのは間違いないでしょう。何かしらの工作をしてロシア人の手で暗殺させるというのも選択肢としてはあり得る」
ただし、そうした工作を仕掛けるリスクはあまりに大きいという。
「プーチンは2020年、サイバー攻撃や生物化学兵器など、ロシアの命運を左右するような攻撃があったら核攻撃をする準備があると明言している。プーチンが暗殺されたり、失敗して未遂に終わるようなことがあれば、それこそ国家の存亡に関わることになるため、ロシアが核攻撃に踏み切る可能性はあります」(小川氏)
そうしたリスクを考えると、まだ期待できるのはロシア国内での政権転覆のシナリオだという。
「軍や治安部隊の一部などが『このままプーチンにロシアを委ねるわけにはいかない』と声を上げ、プーチンを拘束するといったクーデターを起こす。そういったかたちで権力者が引きずり下ろされた例は過去にも多くあります」(小川氏)